このスレッドはロックされています。記事の閲覧のみとなります
シンオウの大地 番外編 (予定)
日時: 2013/09/18 15:41
名前: 緑茶 ◆kEj/68/y4Ak ID:5IfhHV8E

pixivに緑茶@EGFって人がいたら多分私です。

シンオウの大地(本編)
http://www3.koro-pokemon.com/write/read.cgi?no=742

【Pocket Monsters Dark gray】完結
http://www3.koro-pokemon.com/write/read.cgi?no=480


番外編
・13.5話>>12
・黒の三日月』>>19-23
・荒野の薊 >>66-81
・アヤメの紋章>>88-96
・篝火の花 >>105-133
・七夜の虚構>>143-159

時系列の整理など>>160

このスレはシンオウの大地の番外編として利用します。

お知らせ POKENOVEL>>161
ここは名もなきトレーナー達の戦場>>162-166
メンテ
Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 全て表示 |
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.144 )
日時: 2015/04/16 19:51:45
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:v/wch2fE

七夜の虚構 01
----------
ある日の夜 夕飯を食べ終えたリョクはニンフィアとテレビを見ていた

―歪みが観測された地域の上空には金色に光る輪っかが確認されており 現在も調査が―
眠い…なんだかものすごく眠い…

―落下した隕石からはポケルスに酷似した微生物が発見されました―
「主人、さっきのはゆがみって読むのか それともひずみか? …って寝てる…」

―この微生物には危険性はないようですが もしかすると二十年前の流行病の原因は突然変異ではなくて宇宙から―
テレビを消して少女は目をこすりながら答えた
「まだ起きてるよー 今から寝るけどね ……!?」

リョクとニンフィアはほとんど同時に固まった
台所の隅のほうに奇妙な客人が来ていたことに気が付いたのだ

灰色とピンクの妖精のような姿をしていて 本のような何かを笑いながら読んでいる

あれはポケモン…? どこから入ってきたんだろう

ニンフィアはまったく気配がなかった侵入者を警戒し
いつでもハイパーボイスでその妖精を貫ける構えを取った

「あいつ…見たことのないポケモンだ
 気を付けろよ主人 あんな見た目だが何か嫌な感じがするぜ…」

小さなポケモンはニンフィアが攻撃態勢になったのを見ると
慌てて宙に金色の輪っかを浮かべて その中に消えていった

「あっ…逃げられちゃった 珍しいポケモンだから捕獲しようと思ってたのに残念。」

輪っかが空間に溶けるようにして見えなくなり あとには淡い光を帯びた日記が落ちていた
「さっきのポケモン、この日記を読んでたんだよね 何が書いてあるんだろう」

恐る恐る日記に手を伸ばす少女を見て ニンフィアが不思議そうな顔をして言った
「…日記? そんなのがどこにあるっていうんだ 私には見えないぜ?」

リョクとニンフィアは互いに顔を見合わせた
ちょうど外では雨が降り始めたようで 窓を打つ雨粒の音が静かな室内に響き始めた

Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.145 )
日時: 2015/04/16 22:04:28
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:v/wch2fE

七夜の虚構 02
----------
どうやらその日記は見えてはいるもののそこには無いらしい
「存在する世界の位相がズレている」という表現のほうが適切だろうか

それでもリョクが日記を一目で認識できたのはゼルネアスの力を受けているためだ
どの世界でも生と死のことわりは変わらない…
もっともこの時の彼女にそんな知識はなかったのだが

ニンフィアも日記を認識することができたようだ
「そこに在ると無理やり信じ込んだら 私にも安定して見えるようになってきたぜ…
 しかし古い日記だな 日付は12年前か…」

少女がページをめくろうとすると手は日記をすり抜けてしまった
「ふうん…触れるには見る以上に明確なイメージが必要ってわけね」

…そう、日記を持ち上げて手に取って
表紙をめくって次のページへ
…だめだ、読めない
文字が書いてあるのはわかるけど 意味がまったく入ってこない

20分ほど存在があやふやな書物と格闘した後に リョクは疲れた様子でつぶやいた
「…なんだか夢の中で本を読もうとしてる感覚に似てるかも
 夢に出てくる本に書いてある内容なんて自分の頭の中にしかないなのに
 無いものをいくら読み解こうとしたって…」

この本は書物としても極めて異質な存在だった
書かれている内容を知るには本自体ではなく始めから自身に求めなくてはならない
夢の中で本を読む…少女は直感的に解法に辿り着いていた

………


気が付くと目の前に知らない景色が広がっていた
群青色の海と 澄みきった青空…おそらく心の中でしかあり得ないその美しさは
どんな海よりも海らしく どんな青空よりも青空だった

次に気付いたことは自分が明確な姿をしていないということ
これは日記の内容を読もうとした結果なのだから当たり前かもしれない
日記に記された内側を見渡すことはできるが リョクはその日記に登場しないのだから

3番目に気付いたことは 一人の男が隣に立っていたということ
その男は青いコートを着ている褐色の肌の…
「あ…アオギリ さん…っ!?」

思わず叫ぶリョクを見て アオギリは少し困ったような顔で笑って言った
「よお…また会ったな嬢ちゃん」

少女が今手にしている日記は12年前 アオギリが記したものだった
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.146 )
日時: 2015/04/16 22:34:53
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:v/wch2fE

七夜の虚構 03
----------
「グラードンの件では世話になったな…この日記は俺が書いたものだが
 12年前に何があったか知りたいというなら 別に読んでも構わん」

リョクはアオギリの過去に何かがあったことは知っていた
海底洞窟で「地獄」と形容されたその何かは
プラターヌ博士の言った「願いが叶ってしまう世界」とも関係があるのだろう

それとは別に目の前のアオギリに対して疑問が生じた
「あれ…どうして12年前の日記に出てくるアオギリさんが私のことを知ってるんですか」

「俺は日記に記されたアオギリという男の魂の断片…
 俺を知っている嬢ちゃんがこの日記を読んで書かれた世界を想像するというのなら
 俺も嬢ちゃんを知った状態で再構築されるさ
 12年前のアオギリの人格の影に お前の持つイメージが加わったことで俺は今こうして存在している」

「うぅん…つまり大体は私から見たアオギリさんってことね
 日記のアオギリさんに読んでいいって言われても …というかどこまでが活字なんだろう
 手に持ってた日記もどこかに消えちゃってるし」

ここで目を覚ましたときにはまだ手にしていたはずなのに
私の意識から外れたから なくなったってこと…?

少女はこの場所の特性が少し分かってきたような気がした
ここは過去と想像が混ざった世界…日記に書かれた事実を解釈していく場所に
自分自身が立っているという特異な状態だった

「あまり活字のイメージにとらわれないほうがいい
 今嬢ちゃんが見ているもの自体が日記に眠る過去の記憶だ
 日記を読むなら目を閉じろ 記憶の世界に溶け込めば知ることができる
 帰るというならもといた自分の部屋を強く思い出せ」

アオギリの姿が風に吹かれて揺らぎ 青空に消えていく
「…ここから先は 意志の力が無ければ死ぬことになる…気をつけろ」

一人残された少女は迷わずに静かに目を閉じた

12年前に何があったのかを知るために

溶けるようにして透明になっていく彼女はとても楽しそうに微笑んでいた
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.147 )
日時: 2015/04/18 10:40:32
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:v/wch2fE

七夜の虚構 7月7日 晴れ
----------
夏の夜、星明りに照らされた草の茂みをかき分けて 少年と少女が歩いていた
少年の名はアオギリ 港町で育った釣りが得意な普通の少年で この日記を書いた人物である
少女の名はイズミ アオギリとは幼馴染であり 事あるごとに彼を連れまわしている

「ほんとだってばアオギリ 向こうの湖のほうで何か光ったの」
「なんかの見間違いじゃねえのか もう暗くなったし帰った方が…」

その日は星のきれいな夜だった
夜空には何百もの流れ星が降り注ぎ 銀色の曲線が火花のように散っていく
ホウエンの夜空をシシコ座流星群が彩っていた

「ほら、特に変わったことなんて…」
夜空が映り込んだ湖まで歩いて来た二人は そこで言葉を失った
そこには無数の流れ星を見つめて佇む一人の少女の姿があった

…人じゃない…

二人はほとんど同時にそう感じた
星明りのように白い髪に 色白な肌 夜空色の瞳…
服装はシンプルなワンピースだが 風もないのに揺らいでいるように見える

急に現れた二人を見て 少女は慌てて言った

『あ あのっ わたしはただここで星を見てただけで怪しい者じゃないですよ!
 ほらっ 手とか足とかどう見ても普通の人間じゃないですか
 髪の毛は黒くできなかったのでこんな感じにしましたが…
 いきなり 人じゃない だなんて失礼じゃありませんか』

「…普通の人間からはそんな台詞は出てこないし 心を読むこともできねえよ…」

アオギリに呆れた顔で指摘されて 白い少女はがっくりと肩を落とした
「うぅ…まさかこんなに早くバレてしまうとは…」

あれで隠し通すつもりだったのか…と二人は思ったが何も言わないことにした
まずはこの少女が何なのかを知りたかったからだ
もっともその直後にさらに落ち込んだように見えたので
口にせずとも伝わったのかもしれないが

『これがわたしのもとの姿 人の願いを叶えるポケモン ジラーチです』
いつの間にか彼女は星明りに包まれた妖精のような姿に変わっていた

「願い事ポケモン ジラーチ…普通なら水晶の中で千年の眠りについてるんじゃなかったっけ」
イズミもアオギリも 目の前の神秘的なポケモンに驚きはしたものの 恐れはしなかった

『ええ そして今宵 目覚めの時を迎え この湖の底の水晶体から出てきました
 活動するのは七日間 それを過ぎると願いを叶えるための能力が使えなくなるので
 再び力が回復するまで眠りにつきます ちなみにこの姿でいると燃費が悪くてですね よいしょっ…
 こっちの人の姿のほうが目立たないし省エネモードなんですよ』

夜空に浮かんで軽く宙返りをした後、ジラーチは再び白い娘の姿になった

『こうして外に出るのは久しぶりです…そうだ、せっかくなのでお二人になにか願い事があれば
 3つまでならわたしが力になりますよ!』
ジラーチは無垢な笑顔でアオギリとイズミにそう言った

目の前にいる白い少女は 人の願望をただ単に気分がいいからという理由で実現させてしまうのだ
少年と少女は 目の前にいる彼女が只ならぬ存在であることを理解した
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.148 )
日時: 2015/04/26 17:55:14
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:v/wch2fE

七夜の虚構
----------
日記を読み始めたリョクは早くも独特な よくわからない不安を感じていた
「願い事ポケモン ジラーチ…今までおとぎ話の存在だと思ってた
 それじゃあ 願いが叶ってしまう世界ってまさかそのままの意味だったの…?」

……


「願い事っていっても何でもできるわけじゃないんだろ ほら、昔話とかでよくあるような
 人の感情を操ることはできないとか 人を生き返らせるのは駄目とか 願い事の数は増やせないとかの条件が…」

ジラーチはイズミの問いに穏やかな口調で答えた

『3つまでなら私が願い事の力になる ということなので たしかに数は増やせません
 それと正確にはわたしの能力は願いを叶えてあげるものではないんです』

「…どういうことだ ジラーチは人の願いを実現する力を持つと聞いたことがあるが」

『願いとは人の意志 意志は行動を起こし 行動が過程を生み 斯くして結果が世界に生じます
 しかし生じた結果は心の内に描いていたものとは別の物
 他の事象に影響を受けないような 望んでいた通りの質を求めたとして それは人の力の及ぶところではありません
 わたしの力は相応の意志を相応の結果に変換すること
 思い描いただけで実在していない虚構を矛盾なく現実に組み込み 実現させる能力なのです』

アオギリもイズミもその言葉に唖然としていた
目の前にいる星明りに照らされた彼女が 神あるいは化け物のように思えた  

『制限はしいて言えば 世界を崩壊させるような願いでないこと
 必要な資格はその願いを叶えるに相応しい意志を持っていること
 願いを叶える主体はあくまで貴方たち人なのです』

少年と少女はしばらく考え込んだ後で ジラーチに言った
「それなら俺は…せっかくだけど何も頼まない
 今すぐに必要な願いなんて思いつかないし それに
 願いを叶えられるだけの意志があるなら 自力で行動して結果を得るさ」

「そうだね 結果が考えていたものとは違ってたとしても そんなに悪いもんじゃないだろう
 アタシもジラーチに頼みたい願い事はないよ」

『…とても素敵な答えですね それではわたしはメインの仕事に取り掛かるとしましょう
 ジラーチは謂わば事象のバランサー これから一週間は世界に当たり前のことが起こり続けるようにするための
 メンテナンス期間なのですよ』

ジラーチは静かに微笑んで 流れ星が輝く夜空に消えていった
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.149 )
日時: 2015/04/26 20:40:15
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:v/wch2fE

七夜の虚構 7月8日
----------
―日付が変わり 日記は7月8日の朝から始まった―

何故だかわからないが町の人々にはあの爆発が見えていないらしい
昨日ジラーチに会った森の木が炎に包まれ 湖の水面を雷が走り回っているようなその光景は
アオギリとイズミにしか認識できていないようだった

「…畜生 誰も気付かねえのかよ 走るぞイズミ あれはどう考えてもジラーチに関わる何かだ」
二人はモンスターボールを持って昨夜の湖のほうへ駆けていった

……



一方その頃 森の中には少女の陽気な歌声と爆発音が響いていた

「Ach, du lieber Augustin Augustin, Augustin♪
 Ach, du lieber Augustin Alles ist hin…
 やったぁ命中♪ 見たかブルーノ ジラーチの捕獲なんてエルナ一人で十分なのだ!」

キャスケットを被った小柄な赤毛の少女は ついにジラーチの動きを捉えた
ジバコイルの強力な電撃がジラーチを貫き その衝撃が周りの木々を黒く焦がしながら吹き飛ばした

「…いやまだですよ マグネットボムで追い込んでください 手加減はいりません」
ブルーノと呼ばれた中折れ帽を被った青い眼の男がモンスターボールを取り出した

「フフーン 了解♪」
エルナが手を高く上げると同時に 小さな金属の破片が浮かび上がり…
ジラーチの周囲を囲むようにして回りはじめた

『…あなたたちは一体何者ですか どうしてこんなことを…!
 …って…あれ 姿が…?』

砂煙の中から現れたのは先ほどまでの姿ではなく 白い髪の少女のジラーチだった
なんとか立ち上がったジラーチは人間の姿になっていることに戸惑っていた

『そんなはずは どうして 戻れない… 力がうまく使えない…』

「すごいすごい! そっくりどころか見た目が同じなのだ!
 ボスの研究は成功…あとはエルナたちが連れていけば全部上手くいくのだ」

マグネットボムの破片が網のように広がり 青い雷を纏ってジラーチに覆いかぶさった
逃げ場のない全方向からの攻撃に対して 少女はダメージを軽減するのがやっとだった

『ぐ…っ… この程度の電撃で わたしがやられるとでも…』

力を振り絞って電撃の網を吹き飛ばそうとしたその瞬間、
彼女は背後から鋼鉄の鉤爪に貫かれた

『……ぁ…!?』

ドリュウズの右腕がジラーチの胸に突き刺さり 白い服が真っ赤に染まっていく
マグネットボムは彼女を捕獲するためではなく とどめの一撃を躱されないようにするためのもの
「手加減はいらない」という言葉は 地中のドリュウズを巻き込んでしまいそうでも一切遠慮するなという意味だった

「ジラーチ捕獲完了 流石はドリュウズだ 地中からの不意打ちは難しいってのに …お見事」

ブルーノが投げたボールから大量の鎖が出現し ジラーチを縛り付けてから吸い込んだ
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.150 )
日時: 2015/04/26 20:40:36
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:v/wch2fE

七夜の虚構 7月8日
----------
赤毛の少女はブルーノの顔を覗き込むようにして尋ねた
「なあブルーノ これから何が起こるんだ?
 ボスはジラーチを利用すれば願いが叶う世界が実現するって言ってたけど
 エルナには難しいことはよくわかんないぞ」

「…さあ どうなるんでしょうね 僕にも想像がつかない
 今の段階でそれを想像できているのは 頭の中ですでに完成させちゃってるグレーテだけなんです
 僕は行動を起こすための意志に結果が内包されているとは思わないけど
 現在を形作っているのは多くの個人の意志と行動の集積だとは思っています
 もっともそれは人間が集団を成して社会に存在している場合の話ですけどね」

ブルーノは帽子を深くかぶりなおした 目の前に広がる森ではなくどこか遠くを見るように

「ん? んー…なるほど?」

「グレーテはそんな当り前の構造を破壊しようとしている
 そうでもしなければ彼女の願いは叶わないんだから
 心の内に思い描いた虚構を現実にする力が溢れかえるということは意志と世界が癒着してしまうということ
 莫大な数の個人の意志それぞれが現実に干渉するようになる そんな世界の中で今までの個人はどうなってしまうんですかね…」

エルナから返ってきた言葉は次の一言だけだった
「えーっと……?? ふむ、半分くらいしかわからなかったのだ」

「半分わかったならすごいじゃないですか」

「ばっ…ばかにしたな!よくわかんないけど今エルナをばかにしたなブルーノ!」

「…ん?」
背伸びしてブルーノの頭をはたいてやろうとしていた少女は背後の微かな気配を感じ取った

「二人…どこか近くにいる気がするのだ」

「うーん…急ぎましょうかエルナ この林の中を不用心に探し回るほうがよっぽど危険…」

言い終わらないうちに木々を焼け焦がす電撃が辺りを駆け巡った
煙に包まれたエルナとジバコイルは得意げな様子をしている

「探すのは面倒だし 敵が何人かも そもそも敵かどうなのかも いるかいないのかすらわからない
 それなら気配のあった場所をぜんぶ攻撃しちゃえばいいのだ
 敵が出てきても そのまま電撃で気絶しちゃっても ただの気のせいでも外れのないとっても賢い選択
 …いひゃい!」

「…あまりに目立ちすぎるっていうデメリットは考慮してないんですね
 せっかくジラーチが事態を大きくしないように森に幻術をかけてくれてたのに…走りますよ」

ブルーノはエルナの頬っぺたをつねりながらその場を去った
フーパと謎の赤いポケモン ( No.151 )
日時: 2015/04/27 18:43:32
名前: 暴力はゴリラの素 ID:mbzjdIqM

フーパ「フーパおでましぃ~!」
レッド「おっ!フーパ!また会ったな!」
とばして、
レッド「ふむ、バトルいくで~!俺の友達、出てこい!ダークライ!」
ダークライ「ヅーゥーゥ!ンブツンツ…」
フーパ「いくぞ!スチームバースト」
ダークライ「ぬ、くそ!ダークホール!」
ほん!てん!をぉーんジリジリ……
フーパ「ZZZZZZZZZZZ」
フーパは眠ってしまった!
フーパはグウグウ眠っている。
ダークライ「よし!今のうちに……………
悪夢!」
フーパ「イヤァァァ!!」
フーパ「は!よ…よし!異次元ホール!」
ダークライ「噂!」
ダークライ「」
レッド「ならばボルケニオン!」
ボルケ「うぉー!天地崩壊!」
ゴゴゴのゴ…………
フーパ「ルムニリユユヌネネ!

フーパ「いまふうされし」
ボルケ「アンチョビ。」
フーパ「おでましぃ!」
ジガルデ「」
フーパ「くそ!」
※ここからみたら2023年の映画分かっちゃうよ。

       げ
       る
       方
       お

       に
       ね




???「ウォーーーン」
誰だ!
???「我の名は………ドル
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.152 )
日時: 2015/05/06 21:31:55
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:v/wch2fE

七夜の虚構
----------
黒こげになった木の下には アオギリとイズミが倒れていた
「あの…大丈夫ですか二人とも」

リョクが声をかけると二人はまるで演技を中断した役者のように 彼女の方を向いて答えた
「ランターンが電撃を吸収してくれたから一応無事だよ まああまり心配はするな
 アタシらはリョクちゃんに会うまで 少なくとも生きてはいるんだからさ」

「この後俺たちはジラーチを連れ去ったあいつらを追いかけた…
 奴らのコートに付いていたバッジに心当たりがあってな
 見間違いであって欲しいと思ったがあのマークは…」

そういえばエルナとブルーノと名乗る二人の服には六角形のバッジがあった
銀色の縁に 嘴と爪の赤い装飾が施されたデザインはたしか…

「オルカン…実在したんですね」

アルマンド地方の人々が恐れる謎の組織
正式名称は不明 マフィア同士の抗争などが厄介な状況になった時に現れて
犯罪者も人質も傍観者も巻き込み 嵐の如く全てを破壊し尽くす悪魔
ついた異名が「オルカン」…破壊の嵐…

「オルカンがどういった組織なのかも何を企んでいるのかもわからない状況だったが
 最近になって北の岩山を怪しい奴らがうろついてるって噂があった
 …話の続きは奴らの隠れ家からだ」

アオギリとイズミはモンスターボールからペリッパーを出した
「じゃ、先に行くね」

リョクもボールを取り出そうとしたが ポケットには何も入っていなかった
…あ、そうか 今はポケモンを連れてないんだった…

少女は目を閉じて 黒こげになった木が横たわる森の風景を遮断した
次に向かうのはジラーチが連れ去られたオルカンのアジト

日記の内部に馴染みすぎた状態になりつつあることにまだ彼女は気付いていない
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.153 )
日時: 2015/06/05 00:36:51
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:v/wch2fE

七夜の虚構 7月9日 オルカンのアジト
----------
目を覚ましたジラーチは状況を思い出して青ざめた
人間の姿のままで奇妙な装置に拘束され 手足には無数の注射針が刺されている
自分を襲ってきた二人に加えてもう一人 別の女性の姿があった

「Guten Morgen Jirachi. 昨夜はよく眠れたかな」

『あなたは誰…どうして私そっくりの…』

目の前にいる灰色の髪の女性は あまりにもジラーチに似すぎていた 
右目は青みがかった黒 左の目は血のように赤かった

「私の名はグレーテ オルカンのボスをやっている者だ
 さて 幼き世界のバランサーさん お前と私が同じ姿であること
 そしてその姿から何故か自力では戻れないことから
 単に誘拐されただけではないってことがわかってきたよね」

『人間の……姿がなぜかあなたと同じ…待って そんなはずは』

グレーテは混乱するジラーチを見て楽しそうに笑った
「よかった、精神面もちょうどよく仕上がったみたいだ
 もしブルーノのように賢すぎたり エルナ並みの強靭なメンタルだったら
 どうしようかと思ってたよ」

『いったい いったいわたしに何をした! 答えなさい!』

叫ぶジラーチを見ながら グレーテの赤い眼は静かに笑っていた
「あはは、まあ落ち着きなさいな エルナ 説明を頼むよ」

それまでジバコイルと戯れていた少女は急に指名されて飛び起きた

「え エルナがやるの? えーっと ボスの願いを叶えるためには
 本来のジラーチじゃない ボスの願いを叶えられるジラーチが必要で
 だからボスは何年もかけて心の中でジラーチを飼い続けてね
 シシコ座流星群に合わせて 水晶の中にイメージだけのジラーチを刻み込んで
 うーん…よくわかんないのだ」

「おお、回答としては大体合ってるよ エルナが理解してるかどうかは別として ね
 じゃあ次はブルーノ」

青年は困ったように肩をすくめて言った
「……僕も理解してませんよ ジラーチを都合のいい存在に作り替える仕組みなんて人知を超えている
 …グレーテ以外には不可能でしょう 術式の作成もほとんど一人で完成させて
 僕とエルナがやったのは水晶に術式を書き込んだ楔を打ち込むという仕上げだけ
 ただジラーチ これだけは知っておくべきだ 彼女の精神世界は現実の一部を飲み込むくらいに強力で
 そのグレーテ独自のロジックの骨組みになっているのが これだ」

ブルーノが扉を開けた先の部屋には大量の本が所せましと並んでいた
机の上に散らばっている数百枚に及ぶ用紙には
複雑な計算式とグレーテ以外が見てもわからないであろう注釈が延々と続いている

「『無意識の世界』『思考と物質』『進化のベクトルについての考察』
 ……グレーテは数百 数千の書物と共に独自の世界観を完成させてしまった 恐ろしい人ですねまったく」

「そうそう、だけど列挙するならテオドールの『虚と実の平衡』も入れて欲しかったな
 作者が当時の階級社会の影響を受けすぎているようにも思えるが実際に出された答えは寧ろ逆で…」

脱線していく会話はジラーチの苛立った声に遮られた
『ふざけないで…どうやったのかは分からないけど わたしに作られた人格を与え
 自分と同じ姿で固定し 力を制限して思い通りにしようとするなんて…許さない』

力が使えず身動きも取れない ただその眼だけが反抗の意志を示していた

「Es tut mir leid. 何のために情報を与えたと思うジラーチ
 これも含めて刷り込みだよ もう遅い お前は自身の存在が私の支配下にあることを認めてしまったから
 さて叶えてもらおうか 私の願いを」

グレーテの赤い眼が光を反射して不気味に輝いていた
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.154 )
日時: 2015/07/03 23:09:55
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:v/wch2fE

七夜の虚構 7月9日 オルカンのアジト
----------

およそ二時間、ジラーチは機械に活動エネルギーを奪われ薬品を投与され続けた
だが意識が朦朧とする彼女を苦しめていたのは疲労でも薬品の作用でもなく
自己という存在に対する不安だった

わたしが人間によって作り替えられた… そんなことあり得ない
わたしは初めからこの姿でこの人格で……初めからって…いつから?

思考を繰り返すほどに自身を失くしていくジラーチを眺めながら
グレーテは静かに言った
「私の願いはただ一つ お前、その力を手放せ」

グレーテと同じ姿の少女は 次の瞬間 大きく仰け反った
腹部にある三番目の眼が開き 涙が溢れ始めた
『!? 目が……目が閉じられない…っ』

灰色の髪の女性は苦しんでいるジラーチにゆっくりと手を伸ばす

「もう十年以上も昔のことだ
 あの病がアルマンドの人々の命を大量に奪っていくなかで
 国を駄目にしていったのは人間の精神だった
 あの地獄で私は いつか人間の心が人間を殺める日が来ると確信したんだよ
 誰かが革命を起こさなくてはならない 最も優れた精神が…」

「なぜ止める…? その手を離せブルーノ」
青年は彼女の手を掴んだまま離さなかった

「最も優れた精神が この地上を獲得し…世界を自在に操れる、ですか
 大戦をきっかけに設立されたこの組織のボスたちは
 精神について研究し 科学では追いつけない領域まで進めてしまった

 未完成のロジックは血族以外の者には理解できない
 四代目ボスグレーテ、僕はあなたの進む先に何があるのかを見たかった

 だけど…このやり方では世界は壊れてしまう」


「壊れはしないさ 私に言わせれば寧ろ今のこれが壊れた状態だよ
 人が歩み続けるには器ではなく精神の進化が必要で
 これからはあらゆる意志が世界の柱となり ことわりになるんだ」

ブルーノは首を横に振った
「人間の心は…グレーテが思っているほど強靭ではありません」


「…もう遅いんだよブルーノ 世界はすでに変わり始めた
 ジラーチの力は地上に落ち 人間がそれを拾い上げる
 願いが叶う世界の始まりだ」

灰色の長い髪が風に揺れていた
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.155 )
日時: 2015/07/12 11:17:15
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:v/wch2fE

七夜の虚構 7月9日 オルカンのアジト
----------

「ジラーチから…離れなよ 化け物共め」
イズミの褐色の肌は電撃で黒く焼け焦げ アオギリもかなりの血を流している
赤毛の少女はジラーチのもとに駆けつけた二人を陽気な笑顔で叩きのめしてしまった

「あっはははは 今のエルナなら特性の静電気だけで人を感電死させられるのだ」

……


アオギリとイズミはオルカンのアジトに辿り着き
奇妙な機械に固定され動かなくなったジラーチを見つけ激怒した
タイミングを見計らい組織のリーダーらしき女性に対してハイドロポンプで奇襲をかけた
…はずだった

圧縮された流水は側にいた小柄な赤毛の少女に防がれた
いとも容易く、右手から広がるガードの障壁によって

「おお? なんかいつもより強くなってる気がするのだ」

「流石だねエルナ 今のが虚構を現実にする力だ
 本来ならあの威力のハイドロポンプは貯水の障壁でもない限り防げないよ
 さて…ようこそ私たちの隠れ家へ 何の用かなお二人さん」

「何の用かって…決まってんだろ ジラーチを解放しろ」

敵が三人だけならジラーチを助け出せる…その考えが間違いだったことに
アオギリとイズミは気付いてしまった
オルカンの三人を敵に回して 生きて帰ることは極めて難しい

「それはできない相談だ 力を浸透させるための触媒だからね
 にしてもちょうどいいところに来てくれた 折角だからエルナと遊んでやってくれ」

エルナと呼ばれた少女は目を輝かせながら ジバコイルに飛び乗った


……

始めは楽しそうだったエルナの表情から笑みが消え去った
静電気で敵を麻痺させながら足技を多用する低重心の格闘スタイルと
ジバコイルが連射する高火力の10万ボルトの組み合わせは残酷なほどに強力だった

その強さを高めているのがジラーチから得た願いを叶える能力、
エルナの使うジバコイルの電撃は蓄電のランターンだろうが地面タイプのラグラージだろうが
「当たり前のように」貫いた

アオギリとイズミは一方的に攻撃を受け 力尽きて床に倒れた
「あり得ねえ…こんなこと起こるはずが…」

「君たちが納得しなくてもこの子にとってはそれが当たり前なんだよ
 精神の強さがものをいう世界でエルナは手強いぞ」

グレーテが倒れた二人に向かって近づくと
アオギリとイズミはいつの間にか鉄格子の檻の中で手枷と足枷を付けられていた

「…!? 何だよこれ アタシに幻覚でもかけたってのか」

青ざめた表情で鎖をどうにかしようとするイズミを見てブルーノは言った
「残念ながら本物ですよ その鎖は『初めからそこにあって』 敗北したあなた方は
 グレーテによって『つい先ほどそれに拘束された』のです」

「そういうこと それから潜んでいる仔猫がもう一匹…」
グレーテは後方を振り返り 宙に向けて鎖を投げた

金属のぶつかり合う音と小さな悲鳴――…
ドサッという音と同時に鎖に縛られた一人の少女が現れた

「ようこそ願いの叶う世界へ 気分はどうかな仔猫ちゃん」

「……最悪。」

登場人物として引きずり出されたリョクは動揺を隠せなかった
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.156 )
日時: 2015/07/12 11:38:40
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:v/wch2fE

七夜の虚構 7月9日 オルカンのアジト
----------

まずい……全然身動きが取れないし 鎖がやけに重たい
それよりも このグレーテって人は何が目的なの…?

グレーテはリョクの額に手をかざして言った

「リョクというのか なかなか面白い経験をしてきたんだね
 カロス地方でゼルネアスとイベルタルに出会い 膨大な量の力を身に宿し…
 これは驚いた 海の底でグラードンと戦って生きているとはね」

鈍い衝撃音と共にグレーテの手は払いのけられた

「ああ…もう…人の頭から勝手に情報を引き出さないでくれる?」

「…このわずかな時間で干渉を防ぐなんて 器用だね君は
 もしくは 自分は誰にも壊せないという自信があるせいか…」

額から汗を流しつつ リョクは無理やり立ち上がった 
グレーテが創った鎖は相変わらずの重さだが 気力さえあればどうにかできそうだ

「んー…たぶん後者かな それで、『失われた祖国を取り戻す』ってどういうこと?
 あなたの心に散らばってたのを繋げると 流行り病で滅んだアルマンドを再生する、
 そのためにジラーチの力が必要だってことになるみたいだけど」

「…素晴らしい 随分息があがっていると思ったら私の心を読んでいたのか
 そう、失われた…あの病が去ったあと新しい政府はパンデミックの予防と称して都合のいい制度で
 国を歪めていった かつての勇猛果敢な兵士の姿も教養を重んじる学生の影もなくなってしまった」


「…!?重い…っ」
辛うじて立っていた少女の身体は床に向かってうつ伏せに叩きつけられた

グレーテの左眼が毒々しい赤に輝き 彼女は両手を広げて言った
「今ここに私は革命を起こそう 誇り高きアルマンドの民に栄光あれ
 氾濫する意志のなかで自己すら保てない弱者がどうなろうと知ったことか
 世界に必要なのは高貴な魂と強靭な精神を併せ持つ者だ
 意志に基づく虚構の変換 この力が人類の手に在る限り 我々は自らを厳選し続ける」

「貴女は狂ってる…勝手に人の精神が劣化したと嘆いて
 弱者と決めつけた罪のない人たちを淘汰することの何が革命よ
 人間は 時代が変わっても同じ人間…精神性なんてそう変わるものじゃないのに」

終わりのほうは喉を何かに圧迫されたようになってほとんど声が出なかった
リョクはグレーテの前に倒れたまま 彼女の異常性を深く刻み込まれた

「私に言わせれば逆なんだよリョク たしかに沢山の善良で優秀な人々が失われるだろう
 だがこの革命で何万人が淘汰されようと悲しむことなどなにもない
 結果として弱かったのだから仕方のないことだ そんな中生き残った者は間違いなく強者だ
 ふるいにかけられた後の街の光景はどんなだろうね」

「…あれれ? ボス!大変大変大変!」

「ジラーチの姿がどこにもありません…」
エルナとブルーノが気付いたときにはもう遅く
ジラーチは残された力を使ってアジトから脱出していた
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.157 )
日時: 2015/08/17 21:58:00
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:l3DOV3z.

7月10日 オルカンのアジト
----------
もうすぐ夜が明ける
グレーテとブルーノはジラーチを捕えに行ったきりまだ戻ってこない
リョク アオギリ イズミの3人はエルナの力によって鉄格子の中に閉じ込められていた

「なんでアンタは こんな危なっかしいことに協力してるんだ?」
イズミの問いかけに 少し間を置いてからエルナは答えた
彼女にとってグレーテは命の恩人だった

「ボスは…エルナを病から救ってくれたから
 謎だらけの病 ヴォルフを治してくれた その時わかったのだ
 この人は普通の人間を超えてしまった魔女なんだって
 エルナもボスも 生き残った大勢の人々は 今までのアルマンドが消えてしまったことを嘆いてて
 ボスは現実を捻じ曲げてでも取り戻そうとしている…だからエルナが協力するのは当たり前のことなのだ
 人々の願い、心の内に在る虚構…常に理想と共にある世界をあの人は成立させようとしてる…」

「そうかよ…だったら何だこの有様は 見えない化け物がのたうち回っているようなこの感覚は…!」
アオギリのその一言でリョクも気が付いた すべてが異様な雰囲気に包まれ狂い始めている
外から陽が差し込み 朝焼けの空には無数のヒビが入っているのが見えた 

「…ギラティナの…群れ…?」

ひび割れた空から影を纏った巨大な龍が現れた …どうやら街の人々を襲っているらしい

赤毛の少女はその様子を見て ぽつりとつぶやいた
「そっか 失敗したのだ」

それは人々がジラーチの力を得てもたらされた結果
不安定な世界に対する不安が 恐怖の連鎖を引き起こし
恐怖とカオスの象徴としてギラティナが生み出されてしまった 
ギラティナの虚構が人を喰らい 恐怖が人間を発狂へと追いやる

「もうわかってるんでしょエルナ このまま恐怖の感染が拡大したら全員の精神が壊れてしまう」

リョクがその言葉を言い終わらないうちにエルナは鎖と檻を消し去った
普段の陽気な表情は悲しみを帯びたものに変わっていた

「ボスが望んでいたのは…こんな光景じゃないのに…
 3人ともできれば一緒に来てほしい エルナは今からボスを止めに行くのだ」
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.158 )
日時: 2015/08/17 21:58:32
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:l3DOV3z.

七夜の虚構 Tempest
----------

"We are such stuff as dreams are made on, and our little life is rounded with a sleep."
                                 ―The Tempest 第4幕 第1場


荒れ狂う嵐のなかを長い時間 移動してきたはずなのだが その部分の記憶がほとんどない
まるで事象そのものが省略されてしまったようだった

雨に打たれながら 灰色の彼女は瓦礫だらけの場所に佇んでいた
グレーテの前に立つブルーノの姿は 次第に薄れて溶けかかっている…。

「本当は もう少し一緒にいたかったんですけどね…
 あの襲撃があった日、僕は命を落とした グレーテがオルカンのボスになったばかりの頃の話です
 翌朝 目を覚ますと僕は一命を取りとめたことになっていた…でもそれは あなたが願ったから
 僕はあの日から あなたの虚構になった 共有した知識を以って仮説の問題点を指摘し
 時にはあなたの自制心として動いた… 願いが叶う世界が始まる前から あなたは世界を捻じ曲げる才能を持っていた
 しかし人々が能力を得たことで僕は現実として存在できなくなってしまった…
 一部の人間を除いてブルーノという青年はすでにこの世にいないのですから ここでお別れです」

「…ブルーノ……?」
グレーテは手を指し伸ばしたが 青年の姿はもうどこにもなかった

あの青年はグレーテの虚構だった…
状況に戸惑いながら リョクたちは咄嗟に赤毛の少女のほうを振り返った

「…どうやらエルナもボスの虚構ってやつみたいなのだ 今まで自覚してなかったけど」
エルナも同じように 存在が薄れて消えつつあった

グレーテは赤い瞳から涙を流した

「エルナ…私はお前を 助けてあげられなかったのか
 ヴォルフの治療薬で 治してあげられたと思っていたのに…。」

少女は首を横に振って言った
「ボスと初めて会った時には もうエルナは薬では助からない状態だった…
 ボスは他の誰にもできないやり方で 現実を捻じ曲げてまでエルナを救ってくれたのだ
 ボスの虚構として存在出来て、グレーテが生み出してくれて エルナはすっごくしあわせだった…」

その無垢な笑顔も 掠れて歪んだ世界に消えていく…空はひび割れ 足元の瓦礫は雨で水没しつつあった

「ボス…願いの叶う世界は 世界が人々の精神に沈んで 恐怖と狂気で崩壊を繰り返す地獄なのだ
 こうしてる内にもメンタルの弱い人から呑まれていく…最後は多分、ボスでさえ壊される
 その前に これを終わらせてほしいのだ 願いの叶う世界をなかったことに…虚構の側に放り込む
 それができるのは ボスだけだから……」

エルナは最期に小さく さよならと言って 皆の前から姿を消した
Re: 【マルチバトル】リョクの旅 七夜の虚構 ( No.159 )
日時: 2015/09/09 08:59:10
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:iURl1BPw

七夜の虚構 破滅の願い
----------
終わり方はとてもシンプルだった

『願いが叶う世界をなかったことにする 代償は私の存在すべてだ
 私が引き起こしてしまったこの現実を 私ごと虚構の世界に放り込む
 夢に沈んだ世界に閉じ込められている人々は 全部忘れて目を覚ます』

それはグレーテ 一人による革命だったからこそ成立した解法
世界と自信の破滅を望んだ彼女の願いを叶えるために ジラーチは再び姿を現した

アオギリたちはどうにもならないと知りながら 怒らずにはいられなかった
『それじゃあジラーチはどうなる お前らオルカンの都合でいいように使われて 
 収拾がつかなくなったから消えてくれだと ふざけるのも大概にしろよ』

グレーテは願いの叶う世界と共に消えることを選び ジラーチはその願いを叶えることにした
代償としてはまだ足りない…破滅の願いを叶えるためにはジラーチ自体を消すことも必要だった

空が裂けて 大量の雨が地上に降り注いでいく…一瞬にして すべてが水の底に沈んでしまった

………


「…っ ここは…?」

リョクが目を覚ますと そこはどこかで見たような場所だった

「潜水艇の中だよ 海の底に沈んで無事な状況で真っ先に浮かんだのがこれだった
 もうじき 全部が夢だったっていう終わりを迎える…まるで地獄だったけど
 アタシは忘れちゃ駄目だと思うんだ 人間が世界を壊すとこうなってしまうってことをさ」

「リョク…お前とはまたどこかで会う気がするな その時は覚えていないかもしれねえが…
 今はただ眠るとしようぜ 目が覚めたら元の世界だったって状況を願いながら」

まるで沈み込むように 3人は深い眠りに落ちていった
「あぁ、そういう…何でもないです おやすみなさい」


……

雨の音で少女は目を覚ました
そういえば 窓を閉め忘れていたっけ

つけっぱなしになっていたテレビを消して 窓を閉めた
ソファーの近くではニンフィアが体を丸めて眠っている

「…願いの叶う世界か…長い夢だったけど だんだん忘れていってる気がする…
 アオギリさんとイズミさんは時系列から考えて無事…なんだよね」

こうしてる間にも夢が薄れて曖昧になっていくので
リョクはメモ帳を取り出して 覚えているうちに内容を書き留めておこうとした

「……やめとこう」 
アオギリさんとイズミさんは あの地獄を忘れてはならないと言ったけど
私まであの世界の断片を作ってしまったら駄目だ 願いの叶う世界を終わらせるために
私は何も記さない …というか正直、もう内容を半分以上忘れてしまって 書けるほど覚えていない



七夜の虚構はこれでお終い
夢は誰にも語り継がれることなく消えていく
Re: 旅の終わりに ( No.160 )
日時: 2015/09/09 09:55:35
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:iURl1BPw

------時系列の整理------

リョクの旅
アヤメの紋章→篝火の花→七夜の虚構にて夢を見る

数か月前
竜螺旋の夜

6,7年前
黒の三日月

7,8年前
若草の龍での回想部分

8〜10年前
荒野の薊
アザミがシュトゥルムフートに入って戦ってた頃

10年前
・カントー編で何か書こうかなと思ってたけど没になりました

12年前くらい
・アイの誕生 
・七夜の虚構 願いの叶う世界は時間軸としてはここに位置する

------------

〜旅の終わりに〜

彼女の旅はこれにて終了です

このスレのタイトルが【裏話:緑茶の茶番 】だった頃から読んでくださっている方とはもう随分と長い付き合いですね

タイトルがリョクの旅に変わったのは2014年11月28日から
【Pocket Monsters Dark gray】と荒野の薊を書き上げて
その作品をもう少しだけ 軽い感じで続けてみようという試みから始まったのがこの作品です
「小説板で書き続ける」という点に着目すればなかなか理にかなった構造をしてるんじゃないかなと自負してます
明確に区切りのある短い話を連続させる マルチバトルやランダムフリーを日常パートとして行える
引き延ばそうと思えばいくらでも引き延ばせるつくりにしたのです

リョクのキャラはあまりブレませんね
自覚の足りない戦闘狂 好奇心と戦闘意欲が強く 危なっかしいけどHPがチートだから大丈夫って感じです
作中でゼルネアスの生命力を取り込んだと書いてるけど そもそも命とか寿命って乾電池とは違って
充電みたいなことはできないと思うんですよ。ゼルネアスが使うはずだった命の権利の一部を取り込み
これを使って生命の源から直にエネルギーを汲み上げているので蘇生レベルの怪我の修復が可能
…ってことにしてたんだけど 説明しないまま放置してました

〜各章への補足説明〜

アヤメの紋章
「美しい世界を得るためには 命の数を減らすしかない」
フラダリの思想を考慮すると 最終兵器は一時的ではなく
常に命の数を抑制する装置であるほうが望ましい ということで原作の設定を少々変更した。
水と大気に影響を及ぼすので逃げ場はないという恐ろしい性質を持つ。
XY発売後に 主人公は最終兵器の光を浴びていたが影響を受けているのかと一部で議論されていたことも
リョクがゼルネアスの命を吸収するという設定に繋がっている。
最終兵器のあった場所は肉片が飛び散ってグロいことになってたけど多分そのまま放置されてる。

篝火の花
迷走に迷走を重ねた話

マグマ団の というかマツブサの思想は過激なトランスヒューマニズムに近い。

「人間は…人間であり続けるために人類を超える必要があるんだよ
 プロジェクトΩとはその出発点 人間を進化させるための計画だ」

オメガルビーのマグマ団により具体的なセリフを言わせたらこうなるんじゃないかなと
思いながら書いたらこうなった。

リョクがリョクらしい行動をしつつ海底洞窟、アクア団との共闘と続くけど
リョクとカガリの対比を描きたいってとこから始まってるので そこに至るまで手探りで進めた。
途中で七夜の虚構の名前が出てきてるけど この時点では書くつもりはなかった。
雰囲気を出すためのセリフの羅列は 今見返すと違って見えるかもしれない。

七夜の虚構
結局 書きはじめちゃったお話。 文字では視覚的な表現ができない、
文字自体が世界観や雰囲気を阻害し得るという難しい問題にぶつかった辺りで更新のペースが落ちた。

タイトルにあるように予定では7/7〜7/13の7日間にするつもりだったけど
そんなに上手くはいかなかった。アオギリたちの発言から願いの叶う世界でカイオーガの
脅威を目の当たりにしてないとおかしいことに今気づいたので そのうち修正を入れるかも。
潜水艇ザフィーアは 虚構だったものを現実に帰るときに持ち帰った、
あるいはその時のイメージをもとに後にアクア団の技術で作ったもの。
アオギリは夢となった出来事を日記として記したが 数日後に紛失している。

新作はそのうち書くかもしれません
Re: シンオウの大地 番外編(謹賀新年) ( No.161 )
日時: 2016/01/05 11:16:54
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:2D5uieUM

あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします

私がこの小説板で書きはじめたのが2013年の9月、
早いものでここに来て2年以上になります。

小説の書き方なんてまったく知らない状態から
手探りで Pocket Monsters Dark grayを書き上げ
たまに迷走しながら番外編をやったり リョクの旅を終わらせたり…

その間に 素敵な作品を生み出す作家さんたちとも知り合うことができました

少佐さんやササミさんと チャットで作品についてお話ができて楽しかったです

短編集のスレも 今月はどんな名作と迷作が生まれるのか楽しみで…


しかしこの掲示板には悲しい問題があります

ポケモン王国 小説掲示板は あまりに人が減り過ぎた

現在も更新が続いている作品はいくつあるでしょう


チャットにも人気がなかった日 私はPOKENOVELのチャットに行ってみました

そこは良い作家さんたちでにぎわっていて いきなり入室してきた私を
彼らはごく自然に迎え入れてくれました

POKENOVELには 形式がここと異なるから使いにくそう くらいの印象しか持っていなかったのですが

文章力のある作家さんが多く 生きている作品が並ぶ 素敵なサイトだと思うようになりました

「彼らの作品を読み その世界を知っていきたい」 
「どう考えてもPOKENOVELは人がいない王国の小説掲示板よりも良い環境で」
「できることなら彼らにも ここの作品と個性的な作家さんについて知ってほしい」

そんなわけで ここからは今後の私の予定と希望です

・POKNOVELでも「シンオウの大地」を連載する

活動場所を"移す"のではなく"増やす"。 もともとバックアップとして
pixivに投稿するつもりでしたがPOKENOVELに変更します

・王国のチャットもPOKENOVELのチャットも利用する

小説の話をしても場違いにならないし いい人ばかりなので
できれば少佐さんやササミさんとも POKENOVELのチャットで話してみたいです

・「小説板 短編集」スレで彼らの作品を読んでみたい

これはただの願望。 理由は だんだんと短編スレに作品を書く人が減ってるというのと
あの人たちなら間違いなく名作を生み出してくれるから

…とまあ こんな感じですね 

機能停止しつつあるこの掲示板をどうにかできる人たちというのは 
POKENOVELの人たちくらいしか いないんじゃないかな

とも思っていますが 私はただの利用者の一人です
どうにもならなかった時は 惜しみながらここを去りましょう

あとポケモン王国 小説掲示板で書くことにもメリットがあります

それは 枠からはみ出してOKなところ

「気軽に書ける」というと語弊があるけど

もはやポケモン要素皆無な内容だろうが いろんな意味で過激な発言を連発しようが

お咎め無しなのは私の友人が実証済みです☆


※POKENOVELだと場違いというか、下手すりゃ規約違反になりますね

要するに

シンオウの大地をPOKENOVELでも連載するけど
別にここを去る準備ってわけじゃないよ ってことと

POKENOVELは良い作家さんと素敵な作品で賑わってるし
彼らとサイトの垣根を越えて交流できたらいいですね ってことです

( ・ω・)ノシ

ここは名もなきトレーナー達の戦場 ( No.162 )
日時: 2016/01/19 10:52:53
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:2D5uieUM

灰色の空と不毛の大地に 四人のトレーナーが集まっていた
これから行われるのはマルチバトル
数あるルールの中でおそらく最も好き勝手できるポケモンバトルである

少佐(おや…いつものマルチバトルと雰囲気が違うような 気のせいかな ウーム…?)

リョク「やあ、おはよう 調子はどうかな? 
 依頼はごく単純 あちらの部隊を撃破してくれればいいだけ
 データ取得完了…じゃ、始めようか」

4人の手持ち 合計24体の情報が判明し 選出を決める時間になった

さばねこさん@メルツェル
「ビッグボックスへようこそ 歓迎しよう 盛大にな!」
ユキノオー
カエンジシ
カメックス
ローブシン
ギルガルド
チルタリス

しゅんさん@テルミドール
「やはりお前たちか …挑むつもりか マクシミリアン・テルミドールに」
ズルズキン
ユキノオー
ファイアロー
クチート
ウォッシュロトム
ガブリアス

少佐「どういうことだ…二人からまるで何度も死線をくぐり抜けてきた軍人のような雰囲気を感じる…
 たしかに腕の立つトレーナーではあるがしかし…」

リョク@財団
「こっちの戦力は威嚇統一 無理な相手をカバーしてくれないと最悪死ぬけどまあそのつもりで」
ボーマンダ
クチート
カポエラー
ギャラドス
レントラー
ウィン・D・ファンション

いつもと様子が違う戦友たちに戸惑いつつも 男は手際よく選出を決定した
ミロカロス ユキメノコ シャンデラを引き連れて彼らに挑む

しゅん「揃ったようだな」
さばねこ「来たか…なるほど あの二機か」

リョク「時間通りだ 律儀だね…じゃ始めようか ボクらは戦いがしたい」

荒野の風に黒い髪をなびかせながら 少女は不敵な笑みを浮かべた
「人間に…可能性など存在しない ボクはそれを証明してみせる」

それは久しぶりの マルチバトルという戦場だった

〜戦闘BGM@ ACVDより 『Dirty Worker』〜
ここは名もなきトレーナー達の戦場 ( No.163 )
日時: 2016/01/19 10:56:15
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:2D5uieUM

【1ターン目】

さばねこさんはギルガルドしゅんさんはユキノオーを繰り出した
リョクはレントラー 少佐さんはミロカロスを繰り出した

リョク「まさかユキノオーから来るとはね スカーフでもメガマンダより遅いし
 そこまで一貫性ないから来ないと思ってた」
少佐「レグルス君はチョッキですか ギルガルドの型にもよりますがなかなか良い対面だ フフッ」

しゅん「覚えておけ 貴様らの惰弱な発想がポケモンを壊死させるのだと」
ユキノオーの吹雪!

レントラーとミロカロスは凍り付いた

少佐「ファアアア!?」
さば「(^ω^)!?」
リョク「か…神様は 間違えてる…っ…」

球ギルガルドのシャドーボールがレントラーに直撃
霰ですでにレントラーの体力はレッドゾーンまで削られてしまった

【2ターン目】

しゅん「まさか二体とも凍り付くとはな だが流石はミロカロスの耐久だ
 今のうちに奴をどうにかしなければ 我々に勝利はない」

しゅんはユキノオーを引っ込めてミトムを繰り出した

リョク「この程度 想定の範囲内だよォ! アハッ…アハハハ…!」

レントラーは氷の壁を粉砕し ミトムに対して馬鹿力で突撃
反動ダメージでの自滅を避け ある程度一貫性があったがゆえの選択である

さばねこ「動いたか…まあいい 今がその時だ 剣の舞を積むとしよう」
ギルガルド(剣フォルム)の剣の舞 チュインチュイン

少佐「そこで積むとは意外な選択を…ミロカロス、この状況を打破するにはまず

ミロカロスは凍ってしまって動かない

少佐「な…なんだとゥ…(汗)」

リョク「その機体、まだ動けないのかい…まさかその程度じゃないよね?」

【3ターン目】

しゅん「大した損傷ではないな それにしても貴様らは遅すぎる
 そのレントラー、止まって見えるぞ」

ロトムのボルトチェンジでユキノオーに交代
レントラーは倒れた

さば「面倒は嫌いなんだ…ミロカロスを渡してもらおう…」

ガルドのシャドーボールがミロカロスに直撃…だが彼女はまだ倒れない

少佐「私のミロカロスを 見くびってもらっては困るな」
ミロカロスの氷が溶けた

しなやかに身体がうねり 鱗からまばゆい光が放たれる
ミロカロスのミラーコートで ギルガルドは倒れた

リョク「あの状況からガルドを突破するとは…まったく驚異的だ
 そのミロカロス 一体何者だい?」

少佐「…ごく普通の 私が信じてやまないミロカロスですよ」
ここは名もなきトレーナー達の戦場 ( No.164 )
日時: 2016/01/19 12:49:25
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:2D5uieUM

〜戦闘BGMA ACVDより 『Mechanized Memories』〜
【4ターン目】
リョクはカポエラーを繰り出した
さばねこさんはチルタリスを繰り出した

場に出ているのはユキノオー チルタリスとカポエラー ミロカロス

しゅん「カポエラーか…まあいい 猫だましでチルタリスを止めるなら
 こちらでミロカロスを狩らせてもらうぞ」

さばねこ『これがファンタズマだ・・・ついに俺はこいつと一体となった
 もう誰も俺を止めることはできない・・・』キュイイイイン…

チルタリスはメガシンカした

リョク「いやいやいや、 止めさせてもらうよ」
カポエラーは猫だましでメガチルタリスの動きを封じた

ユキノオーのエナジーボールでミロカロスは倒れた

少佐「よくやったミロ…ガルドを撃破し 敵さんのスカーフノオーを
 エナボで固定するところまでやってくれた 最高だよお前は…」

【5ターン目】
少佐さんはユキメノコを繰り出した

少佐「エナボしか撃てないユキノオーに 猫だましで1ターンずらされたチルタリスか フムフム」

リョク「いいタイミングでユキメノコが来てくれたね 歓迎するよ」

しゅん「成程…ユキノオー、帰還するぞ 準備できているなクチート」

しゅんさんはユキノオーを引っ込めてクチートへ交代
威嚇でメノコとカポエラーのAダウン

リョク「ま、そんなとこだろうね ユキメノコの火力じゃ落ちないだろうし
 ちょっとした賭けをやってみるよ でなきゃ多分戦いにならないからさ」

カポエラーのワイドガードが一瞬で二匹の前に展開された

少佐「ユキメノコ あの凶悪な綿雲を撃ち落せ」

ユキメノコの冷凍ビームをまともに喰らった…がメガチルタリスの
特殊耐久は伊達ではない

チルタリスは反撃のために大きく息を吸い込み
…ハイパーボイスはワイドガードによって相殺された…

リョク「どうです、感想は?」

さば「これは面倒なことになった…時期もある クローズプランを開始しよう」

【6ターン目】

リョク「流石に威嚇の入ったカポエラーじゃどうにもならないからね」
カポエラーを引っ込めてボーマンダに交代
威嚇でクチートとチルタリスのAダウン

しゅん「紙装甲のユキメノコにカポエラーとボーマンダとはな…
 最悪の反動勢力、メガクチートのお披露目だ 諸君、派手に行こう」

メガクチートの不意打ちがユキメノコに向かって放たれ…

少佐「おや、どこを狙っているのかねお嬢さん 隣のチルタリスがどうなったかよく見てみるといい」

ユキメノコの氷のつぶてがチルタリスを撃破、クチートの不意打ちは不発に終わった

しゅん「先制技だと…馬鹿な 認めん…認められるかこんなこと…っ」
さばねこ「過ぎたるは及ばざるが如し…もう少し 小人の妬心を知るべきだったな」
ここは名もなきトレーナー達の戦場 ( No.165 )
日時: 2016/01/19 12:49:40
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:2D5uieUM

【7ターン目】
さばねこさんはローブシンを繰り出した

しゅん「お前の最後の一体は…よりによってローブシンか
 どうする…ここで大文字とシャドーボールをミトムで受けて武神の冷凍パンチで
 マンダを…くっ…駄目だ 奴らはそんな間抜けな選択はしない だがここで交代しなければ…」

さば「まあ そうだろうな…その時は私が死ぬだけの話だ」

メガクチート引っ込みロトムに交代

リョク「交代が多いね ボクが引っかかるとでも?」
ボーマンダはメガシンカした

ユキメノコの10万ボルト(急所) ミトムは削られたHPをオボンの実で回復。
リョク(シャドーボールで良かったと思うんだけど…まあ指摘しないでおくよ)

メガマンダのハイパーボイスで武神は倒れた ロトムにわずかなダメージ

さば「これでギルガルド チルタリス ローブシンを失ったか
 まあいい…もはや私も無用だ 人類に…黄金の時代を…ザザ―…」

しゅん「これで二対一か すまない…だが…ゆずれないな
 そこで見ているといい お前が何を求めたのか」

――評決の日は近い――

〜戦闘BGMB ACfAより『Remember』〜

【8ターン目】
しゅん「お前たち やはり腐っては生きられぬか…
 だが足掻いてもらうぞ 見せてみろ シングルレートの英雄の力を」

少佐@死神「彼は尚戦場に立っている 見事と言うべきか哀れと言うべきか…」

リョク「J・・・戻ってきたのかい もうめぼしい奴は残ってないと思うよ彼以外は」

メガマンダは空気を圧縮し始めた

リョク「そしてここでこれから君も死ぬ」
メガマンダのハイパーボイスを喰らってミトムは倒れた

【9ターン目】
しゅんさんはユキノオーを繰り出した 霰が降り始めた
メガマンダの守る
ユキノオーの吹雪
ユキメノコの体力を削り ユキメノコは冷凍ビームを放った

しゅん「氷の礫でも恐れたか やり過ぎたな貴様は」

リョク「可能性のあるものはすべて消去します そういう性格ですから」

【10ターン目】
しゅん「ここで守ってきたということは相手のメガマンダは最速ではないのか
 だが技が吹雪で固定された以上 カポエラーに引かれればマッハパンチで沈められてしまうな」

リョクはメガマンダからカポエラーに交代、
しゅんさんはユキノオーからメガクチートに交代した

ユキメノコの冷凍ビームと霰がメガクチートの体力を削る

少佐「お前は交代した 素早さが勝っていることを失念したか
 敵の動きに合わせて楽しむためか・・・そのどちらが本物なのか私は知りたい」

リョク「そ…そんなものはただの妄言に過ぎない
 なぜ ボクがわざわざ交代したのか カポエラーとの対面を作り、
 ユキメノコの行動を増やすためだ さあ 一緒にめちゃくちゃにしようじゃないか」
ここは名もなきトレーナー達の戦場 ( No.166 )
日時: 2016/01/19 14:26:48
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:2D5uieUM

【11ターン目】
しゅん「脳ミソまでカビたか イカれた奴だ」

リョク「ま、なんと呼んでも構わないけど ボクからすれば イカれてるのは全部だ
 この勝負に 可能性など存在しないんだよ」

カポエラーの猫だまし、ユキメノコの10万ボルト、クチート麻痺、そして霰ダメージ

【12ターン目】
しゅん「これが私の最後の足掻きだ」
クチートの不意打ちでユキメノコは倒れ
カポエラーのインファイトでクチートは倒れた

【13ターン目】
「私が欲するのは果てなき戦いの世界 そして破滅…戦いは良い 私にはそれが必要なんだ」
少佐さんはシャンデラを繰り出した

しゅんさんはユキノオーを繰り出した
しゅん「最後に敗れる そんな定めか…」

カポエラーのマッハパンチ、ユキノオーはギリギリで耐えて吹雪を放った

少佐「ジェネレーター出力再上昇、オペレーション パターン2」

シャンデラの大文字が辺り一面を真っ黒に焼き尽くし ユキノオーは倒れた

リョク「例外なんて存在しないんだよ 人は人によって滅びる それが必然だ」
吐き捨てるような台詞のあとにノイズ混じりの返答が返ってきた

しゅん「惰弱な発想だ だが・・覚えておこう・・・貴様の答えも」

〜エンディングBGM AC4より『Thinker』〜

とまあ こんな一進一退のバトルがあって
バトルビデオが残ってたので 少佐さんより先に書き上げちゃいました

「ま、こんなもんかね 終わってみたらあっけない」

チームに所属し共に戦ったあの世界を 忘れることなど無い
別れはいつか来る それが必然だ
だがもし
君が例外だというのなら

ならば

書き続ければいい

君にはその権利と義務がある

〜Fin〜
シンオウの大地(修正前) ( No.167 )
日時: 2016/03/04 15:31:41
名前: 大破撤退◆kEj/68/y4Ak ID:x6PmRF3M

シンオウの大地 用語まとめ

・キマイラ
人間とポケモンの融合体
姿や知性、性質は個体によって大きく異なる
キマイラの大部分はスタルカで暮らしているがシンオウ本土に隠れて生きている者もいる
人間を襲う習性を持つ個体も存在することが確認されている

発生した原因については不明瞭な部分が多い


・スタルカ
かつてバトルゾーンと呼ばれていたところに位置する島国
ポケモンリーグによって立ち入りも調査も禁止されていた
その存在が明るみになったのは20年前だが 50年前には存在していたとも言われている

国民全員がキマイラであり その発展は姫の圧倒的なカリスマ性に依存している

姫による独裁 管理された居住区 ノルマを重視した社会主義体制と
シンオウ本土とはまったく異なる方向に成長した国である


・姫
スタルカの独裁者 神様のような化け物
詳細は不明
そのカリスマ性は人間を凌駕している


・ポケモンリーグ
ポケモンに関する取り決めを行う最高機関であり
その延長としてシンオウの政府の役割を果たしていた

政府としての役割は最小限に抑え 長きにわたって事実上の最高権力であり続けたが
キマイラが発生し始めた頃から ポケモンに対する偏見や危機感が高まったことで
ポケモンリーグの存在が疑問視され 組織は壊滅した


・グランドレイク
ホテルグランドレイクから発足した対キマイラ機関
キマイラの被害が増えるにつれて急速に成長し 
各町に暮らす人々をキマイラから守るために活動している
ポケモンリーグに変わってシンオウの新たな秩序となった


・フォース
人間の体内に流れている特殊な力 
ポケモンの技「守る」の波動と酷似しており これのおかげで人間は
ポケモンの技に対する耐性が高い 
適性の高い者はフォースを練り上げて障壁を生み出すことが可能で
「ガード」と呼ばれている

またフォースを用いた武器がキマイラに有効なことも判明しており
フォースを浸透させることのできるナイフや銃弾の開発も進んでいる


・ヴァレット
グランドレイクの戦闘員が使用する 対キマイラ用の訓練を積んだポケモン
ポケモンの技であれば通常の武器よりもキマイラにダメージを与えられることから
重宝されているが あくまで武器として扱われている


・クォーター
人間とキマイラの間に生まれた子供のこと
「四分の一」とはポケモンの血のほうを指しており
「四分の一 人ではない者」という差別的な意味も含まれている

容姿は普通の人間とあまり変わらないが 目や髪の色などにその特徴を残していることが多い
身体能力が高く 容姿が整っている傾向がある

世間からは偏見の目で見られやすい
chapter0 [スタルカ]

朝陽が雪に覆われた大地をまぶしく照らし 冷たい風が吹き始めた

今朝もまた集会が始まる
一人の少女が人々の前に姿をあらわした

真っ白な少女 ――…
「姫」と呼ばれる名を持たない彼女は 可憐で 美しい、人とはかけ離れた者だった

白い髪をなびかせながら 雪の積もった道を歩き 小柄な彼女は演壇に立った

人々は息をすることさえ忘れて 彼女が発する言葉を待った



風が止み 辺りは静寂に包まれた
少女は朝の冷たい空気を吸い込み 明るく 温かい声でこう言った

「おはよう 同志諸君、 再開しよう 我々の闘いを」


彼女こそ スタルカのすべてを支配する独裁者
かつてバトルゾーンと呼ばれていた島に ひとつの国を築きあげた 神様のような化け物である

長い年月を経てシンオウは変わってしまった

かつての 人とポケモンが穏やかな暮らしをしていたシンオウはもはや存在しない

本土の人々は新たに発生した化け物、人間とポケモンが融合した「キマイラ」を恐れ
ポケモンまでも社会から遠ざけていった


これはキマイラと戦ったシンオウの人々の物語

スタルカの姫とともに戦ったキマイラの物語

「シンオウ本土の平和ボケした連中に 無慈悲な現実を教えてあげよう
 私のスタルカがすべてを滅ぼすその時まで 戦ってくれ
 私は君たちが大好きだ」

スタルカの姫は無邪気な笑顔でそう言った

chapter1 [トバリシティ 地下水路]

手にしたライトの明かりを頼りに 青年とサーナイトはトバリシティの暗い地下水路を走っていた
短い黒髪に筋肉質な体格の彼は レナード・ティーガー
今回の任務を任された…というか押し付けられたグランドレイクの戦闘員である

「なあサナ 俺らはいつまでこの真っ暗闇の迷路を走らなきゃならないんだ?」

『ベトベトンのキマイラを見つけるまで…目撃情報が正しければそう遠くはないはずです
 気を付けて下さいマスター』

「しかしこれが戦闘員二人に任せる任務かよ ナナちゃんは高みの見物だから実質一人だし 大体…」
青年は愚痴を続けようとしたが サーナイトのテレパシーが運んできた女性の声に遮られた 

『誰が高みの見物だ 西側にはキマイラの反応は無かったよ
 未熟なレンが敵を取り逃した場合に備えて 東の狙撃ポイントに向かってやる』

…忘れてた サーナイトを無線代わりに使ってちゃ愚痴も言えやしない

声の主の名は ナナ・ティアーシャ
艶のある長めの黒髪に青い瞳の小柄な女性、レナードより年下だが立場は上である
穏やかで物静かな振る舞いをするが 気性は荒い

ほとんど無言で走ること十数分、青年とサーナイトは立ち止まって顔を見合わせた

『…マスター こちらのルートはここで行き止まりですね
 いったん分岐点まで戻りますか』

「…そうだな」

キマイラどころかポケモンの姿もないとは
いい加減このジメジメしたとこから抜け出したいんだがな

来た道を引き返そうとしたその瞬間 青年は背後にいたものに気付いた

だが遅かった

サーナイトの悲鳴は途中で遮られ 身体を締め上げられるようにして固定され
顔は恐怖で強張っていた

「畜生…探したぜ、化け物」

ライトの明かりは 暗闇の中に 紫色の毒々しい怪人を照らしていた
chapter2 [トバリシティ 地下水路]

青年は自分の不注意を呪った 
早くに気付いていればサーナイトが
今 目の前で苦しんでいることもなかったというのに

胸の赤い器官を捩じるように押さえつけられて
そのたびに彼女は悲鳴をあげる …これでは反撃しようにも技が使えない

『マスターの力なら…こいつを倒せるはずです…私を助けようなんて
 思わなくていいですから…』


「…そんなことができるか」

…どうする…この化け物はサーナイトを人質にして逃亡するつもりなのか
ここで取り逃せばまたキマイラによる犠牲者が出てしまう
立ち回りを誤ればサナが死ぬ――…

俺の優秀な上司は きっと一切の迷いなく選択してしまうんだろうな
だが…その選択は

その時 ナナの声が直接聞こえてきた 
いつもの落ち着いた口調だったが 声が微かに震えていた

『状況はサーナイトのテレパシーで大方把握したよ レン、通信が使えるうちに敢えて言うぞ
 ポケモンは人質にはならない 今回の任務はその化け物の始末だ
 ……生きて帰ってこい でないと許さないからな』

つくづく彼女らしい台詞だ と青年は思った
それは優先順位に律儀に従って生きてきた者の言葉だ
ベトベトンのキマイラは溶けかかった口を大きく開けて笑った

「順番…私は順番にお前たちを喰います
 私はこのサーナイトを人質にしようとは思いません なぜなら彼女の次に死ぬのはお前だからです」

「へえ、言葉が喋れるとは驚いた しかし直訳したみたいな話し方だな
 ……!お前なにを」

『マス…ター 私に構わず…に…
ベトベトンのキマイラは腕をサーナイトの口の中に押し込み毒を流し込んだ
彼女の顔は熱に浮かされたように赤くなり 汗を流しながら震えはじめた

「この化け物め…サナが死ぬ前にお前を殺す」

だがレナードが攻撃に移るよりも
硬化した鋭利な腕がサーナイトの首元にあてられるほうが早かった

「止まってください
 もしもお前がわずかでも動いたら私はサーナイトの首を刎ねます
 それは私にとって残念なことです
 私はお前たちのことをまったく許しません
 サーナイトは私の毒を長く味わいながら死ぬ必要があります
 お前はそれを何もすることができずに見て待っていてください
 お前たちに可能な限り痛みを与えることはとても大切です」
「……。」
青年とサーナイトの目が合った 毒のせいでテレパシーも使えなくなっていたが
それでも 二人はようやくこの状況に 勝ち筋を見出した
chapter3 [トバリシティ 地下水路]


ここまで胸の器官を圧迫されていては サイコパワーの制御ができない
そんな状況でサーナイトは最大限の 電磁波を放った

電磁波はキマイラの腕を痺れさせ 自分自身をも貫いた
『…今です マスター…!』

「よくやったサナ これで終わる…」

青年は 青白く輝く刀を振り下ろした

「お前たちは何もわかっていないことを知るべきです…直にあのお方がシンオウを……!」

圧縮されたフォースが刀身から放たれ 怪人を内部から斬り裂いていく

地下水路にキマイラの断末魔が響き渡り 紫のゲル状の身体が崩れていった

レナードは倒れかかっていたサーナイトの身体を慌てて支えた
『申し訳ありません マスターをお守りするはずが 足手まといになってしまいました…』

…謝るのは俺のほうじゃないか もう少しでこいつは命を落とすところだった

毒を喰らってから時間が経ちすぎた
赤くなった頬と 止まらない汗が 危険な状態であることを示している

「もう無理に喋らないでくれ 俺も注意が足りなかった それでこのザマだ すまない
 それと…俺はお前を切り捨てるような選択はしない ヴァレットと共に戦う
 今までそうやって生き延びてきたんだ これからもよろしく頼むぞサナ」

『…はい。』
サーナイトは和らいだ表情になって 青年の腕の中で目を閉じた

ヴァレットをボールに戻し 地下水路から地上に出た戦闘員は
数人の白衣とマスクをつけた者達に囲まれていた 

一人の男がサーナイトの入ったボールを奪っていった
「こちらB班、レナード・ティーガーのヴァレットを回収しました このままコトブキに向かいます」

「!? 待て お前らサナをどうする気… ナナさん?」

汗だくで息を切らした黒髪の女性と その隣に彼女のヴァレットであるルカリオがいた

彼女は憎々し気に 白衣の者たちを睨んで言った
「すまないなレン 私たちにはどうすることもできない
 今回の戦闘でサーナイトは負傷し毒もくらった…
 強制的にコトブキ支部での検査に回されることになる」
chapter4 [トバリシティ]

コトブキ支部はグランドレイクの中でもかなり特殊な組織だ
優れた医療技術と科学技術を持ち グランドレイクの戦力増強に最も貢献してきたと言っても
過言ではない ただしその優位性から 自分たちの都合の良いようにしか動こうとしない
ヴァレットの身体検査に対しても黒い噂が絶えない

白衣の者達は車に乗り込んだ

「やっと諦めたみたいね あの子 途中から睨むしかできなくなって見ててかわいそうだったわ」
「彼女 例のヨスガの猟犬だろ もっとデータが取れそうなのに 勿体ない」
「仕事中ですよ皆さん…それでは我々はこれで
 お二方 この町はヨスガほど治安はよくありませんので くれぐれも帰りはお気を付けて」

ナナは軽く舌打ちをして言った
「…とっとと消えろ」

やり方は気に入らないが サーナイトの負った毒に関しては
彼らの技術を信頼するしかないか

青年はあからさまに機嫌の悪い上司のほうに視線を移した
髪から汗が滴っているし 顔も赤い
あの後ルカリオと走ってここまで来たんだろう
常人には無理だが 彼女のスタミナがあれば可能だ
 
「…まあ こんなものだよ 戦闘員とヴァレットの扱いなんて
 作戦は成功、 キマイラを討伐し お前もサーナイトも生き延びた
 レンの選択の方が正しかったみたいだな」

彼女は青い眼で微笑んだ どことなく申し訳なさそうに

「……。」
言いかけてやめた

自分はもう一つの選択肢を 持つことが出来ないだけだ
「帰るか ヨスガシティに」
chapter5 [ヨスガ支部]

グランドレイク ヨスガ支部の廊下で
金髪の青年は レナードに噛みつくような口調で言った

「どういうことか説明してもらおうかレナード
 一昨日の任務でキマイラから奇襲を受けてサーナイトを負傷させた挙句に
 コトブキのイカれた奴らに連れていかれただと!?」

出合い頭に出てくる台詞がそれか 相変わらずだなこいつは…

「説明の必要はなさそうだがアルバート」

名前はアルバート・クラーク
レナードと同じくグランドレイクの戦闘員 ヴァレットはレントラー
天才と称されるほどの射撃センスを持つ 実力のある自信家である

「大方の説明はナナさんから聞いた やはりお前に彼女は任せられんな
 …だが まあ 何も失わずに戻ってきたんだ よくやったほうか…」

わずかに陰りのある表情でアルバートは呟いた

「これ以上グランドレイクを人手不足にするわけにもいかんだろう
 まあ任務をこなせないようじゃ ナナちゃんに狙撃されるほうが先だろうがな」

「それで、サーナイトはまだコトブキから戻ってこられ…っ…サーナイト!」
アルバートは廊下の向こうから歩いてくる二人を見て 輝かしい声で叫んだ

検査の終わったサーナイトを連れてきたナナは その様子に苦笑した
「まったく、呆れるほど一途な奴だ レン、サーナイトを返すぞ 傷は完治したし異常もないそうだ」


『ただいま戻りました マスター!』


青年のもとに駆け寄るサーナイト、

いきなり飛びつかれて困惑するレナードと

それに嫉妬しつつも嬉しそうなアルバート
「なあお前たち、ヴァレットは…」

ナナはそこで口をつぐんでしまった
そして三人に背を向けて 階段のほうに歩いて行った

「……いい 何でもない。 休憩時間もそろそろ終わりだ オフィスに戻るぞ」

ヴァレットは戦いの道具、それをもっともらしい言い回しで説教しかけた彼女は
目の前の和やかな雰囲気にたじろいだ
chapter6 [401号室]

その日はキマイラの目撃情報の整理で忙しく 仕事が終わったのは九時過ぎだった
外はすっかり暗くなっていてよく晴れた綺麗な星空を 街の灯りが曇らせていた

「家に帰るというか…これだけ近いと寮に戻るって感じだな」
ビルから歩いて五分もしないところにある複数のマンション、
強制ではないが グランドレイクに務めている者の8割以上がここを利用している 

レナードの隣を歩くサーナイトは 彼の方を見上げて 少し楽しそうに言った
『遠すぎるよりはいいじゃないですか
 それにこの周辺なら私がマスターと歩いていても 変な目で見られることはありません♪』

「…昔はそれが当たり前だったのにな 今じゃどこに行ってもポケモンは危険だって連呼する奴らばかりだ」



自分の部屋に戻った青年は 明かりを点けようとした 
しかし壁のスイッチを押しても 部屋は真っ暗なままだった

『…電灯が切れちゃってるみたいですね』

「たしか買っておいたのが あるはずだ…」

押入れの上の棚にあるはずなんだが… この暗い中で 探す羽目になるとは

青年が窓からの光を頼りに 手探りで新しい電灯を探していたとき

不意に背中に重さを感じた

「……サーナイト…?」

『申し訳ありません…こうして帰って来られたのに 今になって…あの時のことを思いだして…』

…無理もない 怪物に不意打ちされて 地下水路で死ぬような目に会ったばかりなのだから

サーナイトの濡れた頬が月明かりに照らされていた

『怖い… 私は… 私のせいでマスターの命が危険になることが 怖いんです
 マスターをお守りしなきゃいけないのに 敵に人質にとられてしまうなんて
 情けない、あってはならない 最大の屈辱です
 だから…もしも今後 私がマスターの足枷になってしまうようなことがあったら…』

『その時は 私を助けないでください』

青年は重いため息をつき サーナイトの震える手を握った
chapter7 [401号室]

「それは駄目だ 戦場では常に生き延びることを考えろ
 諦めた奴から死んでいって その死と敗北は連鎖する」

『私は 死ぬつもりも負けるつもりもありません でも…あの時みたいなのはもうイヤなんです だから…』

そんなことを頼まれても困るだけだ
ヴァレットのその台詞で喜ぶのは管理局の奴らくらいのものだろう

「あの時危険な目に遭ったのは 俺じゃなくお前なんだよサナ
 俺はお前にとっての優先順位なんかどうでもいい 目の前でお前が倒れるところなんて見たくない
 だからお前が何と言おうが 助けるさ」

サーナイトは寄りかかっていた身体を起こして 目元を拭った

『…いけませんね私 昔とは変わったつもりだったのに…
 私は マスターと共に戦います マスターと一緒に生きたいです だけど』

『マスターのために死ぬなんて馬鹿なことはしません』

サーナイトは 少しぎこちなく笑った

「電灯を換えたら今日はもう休もう…」

急な任務からようやく解放されて 二人は深い眠りについた


………

…サーナイトと出会ったのは十年前の雨の日だった


いや、あの時はまだキルリアか

学校からの帰り道を歩いていたら うちのほうから気味の悪い雄叫びと
破壊の音、宙を舞う鉄骨と 傘を投げ出して逃げ惑う人々の群れに出くわした

その化け物は屋根の上に跳び上がり 俺は初めてキマイラというものを目撃した
毛むくじゃらの化け物は人間の頭部を喰っていた

キマイラなんて幼稚な都市伝説だと 小ばかにしていた気持ちはその悪夢のような現実に砕かれた

「…母さん…?」

母の死体は 呆然としていた俺の見ている間に 原型がわからないほどに斬り裂かれていった
犠牲者は28名 最後に喰われたのが俺の母親だった

人の血にまみれ 怒り狂ったように暴れ回るキマイラに 俺は見つかってしまった
両者の間にあった距離など ほんの数秒で意味を失い 真っ赤に血走った化け物の目が
俺に殺意を向けたその時だった

『伏せてっ!』

頭の中に直接 声が、メッセージが伝わってきたような感覚がした
次の瞬間、 キマイラは数十メートル先の塀に叩きつけられ

小柄な緑のポケモンが 化け物から俺を守るように
冷たい雨にうたれながら立っていた
chapter8 [401号室]

土砂降りになった雨の中で彼女は戦い続けた

だが いくらサイケ光線を浴びせても キマイラの動きは止まらない
毛むくじゃらの化け物は 目の前の小さなポケモンを
何度も何度も 褐色の拳で叩き潰した

…水たまりは真っ赤に染まり とうとう彼女は
立ち上がることができなくなった

化け物は 逃げ遅れた人々が大勢残っているビルを見つけて目をギラつかせている

『ま…だ… 私はまだ戦えます キマイラを 倒さなきゃ…』

俺は 血を流しながら弱々しくサイケ光線を放つキルリアに驚いた
敵わない敵を相手に なぜ戦い続けられるのかが わからなかった

キマイラは鬱陶しそうに鼻息を荒げ 彼女にとどめを刺そうとした その時…
灰色の空に銃声が響き 化け物は倒れた


「オコリザルのキマイラ一匹が 社会の平穏を台無しにする…
 まったく 嫌な世の中だ」

振り向くとそこには 背の高い茶髪の男性、グランドレイク ヨスガ部隊長
エドウィン・ブレムナーの姿があった

「訓練所から飛び出してキマイラに立ち向かうとは 勇敢なキルリアだ…ゆっくりお休み
 震えがっていた無能な教官たちには私から一言 言っておくとしよう」

命を救ってもらった礼も言えないまま キルリアとエドウィンは立ち去り
戦いの傷跡が残った町には 清掃と修復作業のため 大勢の作業員が集まった

妹のリアンは 母の死を ただ茫然とした様子で聞いていた




………もうあれから十年が経つのか


『マスター もう朝ですよ 休みだからっていい加減起きないと』

あの日から全てが変わってしまった

リアンには大反対されたが 学校を辞めてグランドレイクに入った

父は病気で亡くなった 母はキマイラに殺された だから俺が稼ぐしかなかった
形だけの面接で簡単に入社できて 給料も気味が悪いほどに良かった

この時の選択が正しかったのかどうかはよくわからないが 一つ言えることは


『…起きてますよねマスター 朝ごはん作ってあげませんよ』

「昨日買ったシュカバターがある 今朝はトーストにしよう」

サーナイトは当時よりも 楽しそうに笑うようになった
chapter9 [スタルカ]

シンオウ地方に月が昇り 北東の小さな島国にも静かな夜が訪れる
居住区には質素な集合住宅が整然と並び 町全体がどこかストイックで無機質な気品に満ちていた

そして街の中央、スタルカの姫が暮らすこの城も
荘厳な雰囲気でありながら 華やかさが一切感じられない 独特な美しさを持っていた

「カゴの実を煮込んだビーフシチュー…姫様は気に入ってくれるでしょうか」

白い着物姿の少女は不安げに呟いた
彼女の名はユキ スタルカでも数少ないユキメノコのキマイラであり
物心ついた頃からずっと姫のもとに仕えてきた従者である


「姫様 お茶をお持ちしま …っ?」

ユキの目の前には とても美味しそうに夕食を食べながら
足をぱたぱたさせている 少女の姿があった

「ここまで美味い料理を作れるとは 良い従者を持った私は幸せ者だな」
姫は無邪気に笑っている

その様子を見た少女の目から 一筋の涙がこぼれた
ただ 嬉しかったから

スタルカの姫は美しかった
一挙一動が他者を感涙させ 国を揺るがすほどに

「私も…姫様の従者でいられることがとても幸せです」



食事を終えたスタルカの姫は立ち上がり
ユキの透き通るような水色の目を 静かに見つめた

「…姫様…?」

「ここまで来るのに半世紀かかった ようやく戦の準備が整ったよ」

小さな従者は 改めて姫の瞳を綺麗だと思った 
底知れない野心を秘めて微笑む 淡い桜色の瞳は とても美しかった

「何も知らない彼らが 不安そうに遠くから眺めている間に
 スタルカは一直線に発展を遂げた 
 私はこれから彼らを殺すよ
 半世紀前の所業を忘れ 我が物顔でシンオウの大地に住み着く彼らを
 ユキ…お前にはこの国のために人を殺める覚悟はあるか?」

やはり姫様は姫様だ、私が仕えるお方は この人しかいない

私は笑顔で一礼し 白い袖を振った

冷気が小さな部屋を包み込み 無数の氷の刃が宙を舞い始めた

「姫様は私の生きる理由のすべてです 姫様が望むなら
 力の限りを尽くして敵の命を奪いましょう
 姫様が側にいてくださるなら私は
 殺すこと 殺されることに 迷いもためらいも後悔もありません」

「本当に…最高の従者だよ お前は」

スタルカの姫は穏やかに笑った
※おまけ※

やはり姫様は姫様だ、私が仕えるお方は この人しかいない

ユキは笑顔で一礼し 白い袖を振った

冷気が小さな部屋を包み込み 無数の氷の刃が宙を舞い始めた

「姫様は私の生きる理由のすべてです 姫様が望むなら
 力の限りを尽くして敵の命を奪いましょう
 姫様が側にいてくださるなら私は…」

「ふぇっくしゅん!」

「姫様っ!? すみません寒かったですよね このハンカチをお使いください
 隣の部屋は暖炉で温かくしてありますので早くこちらへ」

ユキは姫の手を引っ張って氷漬けになった部屋を後にした

「もう…この演出考えたの誰ですか また撮り直しさせるなんて 姫様への配慮が足りてませんね」

「ん、私が採用した演出だよ これならユキの能力と行動原理を手っ取り早く説明できるだろう」

「姫様が私のことを思って…わかりました このユキ 全力でやらせていただきます///」

〜このあと城の半分が凍結した〜
chapter10 [007号室]

ナナ・ティアーシャといえばヨスガ支部以外の者にまで
名が知れ渡っている女性戦闘員だ

優れた視力と射撃のセンスを駆使して 遠距離から敵を撃ち抜くスナイパー

通常フォースは 本人から距離が離れるほど威力が落ちてしまうが
彼女はスナイパーライフルの弾丸に使えるほどに有効範囲が広いフォースを
使用できた

仕事の徹底振りと その容姿も相まって男女問わず 彼女に憧れる者は多い
…が そんな超人扱いされているナナにも弱いものがあった

「んぅ……」

散らかった部屋に 朝陽がカーテンの隙間から差し込んでいる
彼女は寝ぼけ眼で けたたましく鳴り響く目覚まし時計に手を伸ばした

今日は休みか…よかった…休みだ よし、片づけは起きてからやろう…


軽く伸びをしたあとで ナナは再び布団にもぐって体を丸めた

『いや寝るなよ 起きろよ』

そしていつものようにルカリオに布団を引きはがされた

「…休みの日くらいいいじゃないか 特に用事もないんだし」

パジャマ姿のまま不服そうな顔をしている彼女に 小さなルカリオは呆れた顔で言った

『毎朝自分で起きない奴の言う台詞じゃねーぞ それから用事が無いって
 この散らかった部屋をそのままにしておくつもりだったのかよ』

…脱ぎ捨てたままの服と靴下 散乱したプリント類に 出し忘れたゴミ袋…

パジャマのボタンを外しながら 少女は眠たそうに呟いた
「ルカリオ…昨日の夕飯 温めといてくれ」

『お前はヴァレットを何だと思って っ…ていうかさっさと着替えてくれ』

子どものルカリオは顔を真っ赤にして目を背けた

「戦いの道具だ お前も 私も… キマイラから人を守るため
 裏で動いている奴らから グランドレイクを守るため」

命令に従い 任務をこなしてきたら いつしかヨスガの猟犬と呼ばれるようになっていた
誰が言い始めたかは知らないが 皮肉の効いた二つ名だ

残しておいたスープを火にかけながら ナナは
絶対にヴァレットを道具とは言わない青年のことを考えていた

ベトベトンのキマイラを一刀両断したことばかりが評価されているが
あの状況からサーナイトを救えたことのほうを賞賛すべきだろう

「…そうだな 私ではお前を守ってやれない ルカリオの安全よりも作戦遂行を優先してしまうから」

もう戦い方も 生き方も変えることができなくなっている
そんな彼女を見て ルカリオは明るく言った

『自分の命くらい自分で守るさ オレの仕事はナナと共に敵を倒すことだ
 武器を拾うために敵の懐に飛び込むような真似はしなくていい』

その目に迷いはなかった
彼はナナのポケモンである以前に自分はグランドレイクのヴァレットであると知っていた

「そうか…では敵に捕まったのが私のほうで 私が助けるなと命じたら お前はどうする?」

ほんの少しの間 首をかしげてからルカリオは答えた

『ヴァレットは自己判断で動いていいような役職じゃないからな
 そう言われた以上 ナナの命令に従うさ オレはお前の道具でいい
 そういう仕事だお互いに』

「そうだな それでいい…」

戦闘員とヴァレットが信頼し合った上で 任務を遂行するために共闘する
私たちはそうやって戦って 生き延びてきた

モンスターボールに戻る直前に ルカリオは言った
『まあでも 仕事とか関係なしにオレはナナのことを結構気に入ってるけどな
 寝ぼすけなのと 仕事以外がだらしないのは どうにかしてほしいけど』

散らかった部屋には 不意を突かれて赤面した少女が取り残された
chapter11 [ズイタウン]

その日の夜 遺跡に寄り添うようにして存在する小さな村で
悲劇が起きた 人も牛も馬も死に 辺り一面は血の色に染まっていった

「化け物…化け物め…だからオレは反対したんだ
 なにが討伐隊だ あっさり全滅しやがって 手を出してはいけなかったんだ…」

青ざめた顔で大慌てで逃げ出した男は 背後から触手のようなもので貫かれ絶命した

倒壊し燃えていく家々の炎に照らされて 異様な姿の女性は静かに微笑んでいた

「青く長い髪に…黒い肌…この化け物はモンジャラか」

「まあ…一目で当てるとはよい観察眼をお持ちなのですね
 ですが静かに暮らしていただけの わたくしたちを化け物だと言って
 殺しにくるというのはあんまりではないでしょうか」

長い髪が目にも止まらぬ速さで動き また一人の命が奪われる
漆黒の肌の少女はいかにも困ったような仕草をして続けた

「弟が討伐隊とやらに目をつけられたからこうなってしまった
 そのことについては申し訳なく思っているのですけれど
 こうなってしまった以上 わたくしたちはあなた方を殺すしかないのです」

「まあすぐに終わりますから どうか目をつむっていてくださいな」
落ち着いた口調のあとに また一人 三人 五人と死んでゆく

その直後 発砲音が鳴り響き 彼女は背後から数十発の弾丸を浴びせられて倒れた

だが 引き裂かれた黒い身体はすぐに再生をはじめ
キマイラの少女は涼しい顔で起き上がり 後ろを振り返った

「…鉛玉でも 存外痛いものですね やはりここは鉄砲を所持している方から
 片づけるとしましょうか…」

都会から離れた小さな村で 逃げ遅れた人々の断末魔が絶えず響いていた

……


[007号室]

ナナが温かい湯船につかって五分と経たないときに 電話が鳴った

こんな時間にグランドレイクの回線からかかってくるとは 嫌な予感しかしないな

「緊急時以外に入浴の時間に電話するのはよして…ってエドウィン隊長…」

「すまんな だが今がその緊急時だ ズイタウンに戦闘能力の極めて高いキマイラが現れた
 君に討伐を依頼したい 引き受けてくれるならこのまま作戦内容の説明に移るが」

別の任務で遠くへ行っている者と負傷した戦闘員の数を思い返しただけで
事態の深刻さは容易に想像がついた

「了解した 湯冷めしない程度に手短に頼むよ」
せっかく部屋が片付いてあとは寝るだけだと思っていたのに…

彼女はボールからルカリオを出して 出撃の準備をするよう指示したのだが

『…ったく いつまでその格好でいる気だよ』
荷物より先に手渡されたのは衣服のほうだった
第一回スタルカラジオ

淡い水色の髪の少女が緊張した様子で台本を確認し
始まりの挨拶をしようとしたその時 
隣の白い髪の姫は晴れやかな笑顔で 本編のおまけを開始した

「おはよう同志諸君 まずはここまで読んでくれたことに感謝する
 さあ 共にシンオウ本土を蹂躙し尽くそうではないか」

「…姫様 さっそく趣旨がずれてます そんな物騒なコーナーじゃないですよこれ
 皆さまからいただいた質問や感想に回答するんです まずはこちらの質問から」

・スタルカの建国の経緯について教えてください
・スタルカの姫は世襲制なのでしょうか それとも革命かなにかで独裁政権を握ったのでしょうか

「いきなりネタバレになりそうな質問が来ちゃいましたね
 スタルカの建国は五十年前なので 私も詳しいことはわかりませんが」

一応何があったのかは教えてもらったけれど その時のことを姫様はあまり話したがらない

「スタルカは半世紀前に私がつくった国 その頃のこの土地は…文字通りの地獄だったよ
 世襲制もなにも始まりから今に至るまで私が統治し続けている」

「姫様こんな幼い容姿で五十超えてますからね 信じられませんね
 ほらほっぺたこんなに柔らかいんですよ」ムニムニ

髪は真っ白 肌は色白 瞳は野望に満ちた桜色
一目で言葉を失ってしまうこの美しさをお見せできないのが残念です

「キマイラの中でも私は少々特殊な成り立ちだからね 人間の常識を当てはめない方がいい」

「さてお次の質問は…シンオウの大地の時代設定について教えてください だそうですよ」モチモチ

「ユキ そろそろ手をどけてくれないかな あごの下はくすぐったい」

「嫌です」キッパリ

「……。」

「…冗談です」(´・ω・`)

「シンオウの大地の世界は 通信技術の遅れを考えると
 19世紀後半から20世紀前半のイメージかな
 インターネットも携帯電話もないし 電車より機関車のほうが多い」

「多いというか スタルカに電車走ってないじゃないですか」

スタルカの交通は徹底して無駄を省いた設計がなされている
人々の主な移動手段は機関車とバス、自動車を所有しているのは極一部の者達だけだ

「技術がいわゆる現代にまったく追いついていないことを
 意外に思うかもしれないが シンオウは技術が飛躍的に進むきっかけもなく
 人々は長い間ポケモンリーグの漫然とした支配のもとで暮らしてきたのだから
 当然とも言える ただポケモンと暮らしてきただけあってポケモンに関する科学技術は
 それなりに進んでいるよ」

「周りにあるのは無人島ばかりで敵国の存在すらありませんでしたからね
 そうそう、コトブキが技術を独占していることも大きな要因だそうです」

「呆れた話だ せいぜいそうやって内輪で足を引っ張り合っているといい
 ユキ、最後の質問は?」

「えーと…」

・社会主義ってなんですか


「これは自分で調べることを知らない無知な子どもからの質問なのか
 あるいは社会主義について考えた後の 虚無感を含ませた問いかけなのだろうか」

いやいや絶対前者だと思うんですけど どちらにせよ尺が足りませんね

「スタルカの経済については長くなるのでまた今度話しますね
 ってあれ まだハガキが残ってた どれどれ」

・ユキメノコのユキちゃんに粛清されるなら寧ろ本(ry …この先は破かれてしまって読めない

「それでは今回はこの辺でお別れです シンオウの大地についての質問や感想は
 直接コメントを送るか スタルカの郵便ポストに投函してくださいね」
chapter12 [209番道路]

ジークとは グランドレイクの戦闘員たちを
森や沼地 岩山に雪原へと迅速に送り届けるために開発された
四輪駆動の自動車である

特殊なサスペンションが悪路をものともしない走行を可能としているが
乗り心地は快適とは言い難いつくりになっている

淹れたばかりのコーヒーを飲みあげる暇もなく呼び出された黒髪の青年は
遠ざかっていくヨスガシティの灯りを憂鬱な気分で眺めていた

「…なんでこんな真夜中に ズイタウンに向かってるんだろうな 俺らは」

レナードの愚痴に続けて 隣で運転しているアルバートは言った

「まったくだ オレはさっきまで寝ていたはずなんだがな
 随分と素敵なゆりかごを用意してくれたものだ 何のための交代制だ
 夜勤の奴らに向かわせればいいものを」

とはいえ夜勤の戦闘員は 街の警備が主な仕事で 戦闘経験の浅いものが多い
後ろの座席で揺られながら髪を拭いているナナは いつもより険しい表情だった

「敵は人語を話すようだ それも流暢に 見た目こそ触手の生えた異形だが
 体型は人間の少女そっくりらしい 要するに普段の敵とはレベルが違う」

いかにも隊長らしい指示だ とレナードは思った
前線で戦う者の数は最小限に抑え 救護班と共に向かわせる…
ジークの後方には 数十台もの救護車の列が続いている

「犠牲を出さないようにか…信頼されたもんだな
 それで、トバリの奴らは何をしてるんだ
 まさかこの状況で 俺らに任せて傍観するつもりじゃないだろうな」

外を眺めていたナナはため息をついた
「…シェリー・ウォルコットの性格を知っているか
 報酬のために戦う キマイラを金儲けの道具にしてる守銭奴だぞ
 金にならない戦いはしない…形だけ戦闘員数人を送って終わりだろうよ」

「どうしたレナード 戦闘員三人のみで戦いに挑むのが怖くなったか」

「ああ、怖いな 化け物がいるところに飛び込んでいくのは
 だが今頃 人がその化け物に殺されてるんだ…
 化け物を殺せる人間が行くしかないだろう」

…と、出る前にサナに言ったのとほとんど同じ台詞を言ってしまった

「私にも恐怖は常にある それでもキマイラを倒すのが今の私の務めだ
 取るべき行動は何も変わらない アルはこの任務が怖くはないのか」

「怖くないわけがないだろう だがここで死ぬつもりはない
 敵を殺して生き延びて その繰り返しだ…さて、見えてきたぞズイタウンが」

「これは……遅かったのか」

車から降りた三人の前には 炎に包まれて燃えていく村があった
chapter13 [トバリシティ]

グランドレイクという企業がポケモンリーグに代わる新たな政府として
急速に発展できたのは 各都市に存在していた有力者…財閥や巨大な研究機関が
「キマイラから人々を守る」という大義のもとに傘下に収まったためである

今やシンオウを牛耳る大企業でありながら 一枚岩ではない、
どころか最低限の統率しかとれないほどに 各支部は独自の権力を有していた

グランドレイク トバリ支部は報酬の為なら何をするかわからない金の亡者の集まりだった
金の為なら何でもする連中の集まりという表現のほうが適切かもしれないが

レナードらがズイタウンに向かっている頃
真紅の髪の女性 シェリー・ウォルコットは普段と変わらず酒を飲んでいた

「隊長、本部から電話です」

「はいよー 夜中に仕事の電話とか 本部は働き者だねー」

紅色の三つ編みのおさげを揺らしながら シェリーは電話のほうまで歩いて行った

受話器から聞こえてきたのは 生真面目そうな淡々とした口調の若い女性の声だった
「夜分遅くに失礼します グランドレイク本部 副隊長 メアリー・グレイナーです
 今回…」

「おお メアちゃん久しぶりー いいお酒があるんだけどさ 今度飲みに来ない?」

「メアちゃんって…また随分飲んでるみたいですね…現在ズイタウンにキマイラが出現し
 住民たちが襲われ 多数の死者が出ているのをご存知ですか」

電話の向こうの深刻な空気など気にする様子もなく
シェリーはお猪口の酒を飲みほした

「聞いてるよー なかなか強いみたいねそいつ」

「トバリ部隊が送ったのはたいして実力もない末端の戦闘員ばかり…
 まともな対応を要請しても 報酬に文句を言いだす始末
 貴女方はあの村で死人が出ているというのに何をしているんですか」

「何をって 呑気にお酒を飲んでるよー キマイラがどれだけ人を殺そうと
 お姉さんたちは別に何とも思わないからね まあなんていうかさ、
 アタシらを動かすにはあの額じゃちょっと足りないかな せめて…」

商談に持ち込もうとした台詞は 途中でメアリーに遮られた

「モンジャラの化け物が暴れるこの夜に 平気な顔で酒を飲む…
 面倒な人たちですね お金のことしか頭にないんですから」

「あはは もっとお金もらえるなら話は別だったのにね
 キマイラが暴れて 人が死に みんなが泣きながらアタシらにすがりつく
 そんな地獄で笑って酒を飲み交わすのが グランドレイク トバリ部隊だよー」

実力のある者だけが金と地位を手にし能力のなかった者はグランドレイクの保護のもと搾取される
それが 金儲けとギャンブルと戦いが大好きなトバリシティの人々がつくり上げた社会だった

「キマイラは金儲けの道具ですか…こちらとしてもあれ以上の金額は用意できません
 ヨスガ部隊のほうからも 戦闘員が向かっていますが たった三人では…」

「んー…エドウィンの判断で送った三人なら勝てると思うよ
 一人の戦闘員も死なずにね あいつはそういうやり方だから
 こっちから戦力を補充する必要も無さそうね」

「待ちなさい それ以前に弱者を食い物にする貴女方のやり方は
 おじい…社長の考えるグランドレイクの理念に反するものであり だいたい――

「それじゃメアちゃん おじいちゃんによろしくねー」
にこやかな笑顔と共に 会話は終わった

「さあて 飲みなおすか」

背中を反らして伸びをしたあと 彼女は宴会の席に戻っていった

chaptr14 [ズイタウン]

ジークから降りた黒髪の青年は 倒壊した家々を注意深く見まわした

「……いたぞ まだ生きてる」

足を怪我してうずくまっていた少年はレナードたちを見て驚いた
「あんたらは グランドレイクの人たちか…助けに来てくれたのか…?」

包帯を取り出したナナがこくりとうなずく
ほんの少しだけ少年の表情に落ち着きが戻ったように見えた

「傷口は浅いぞ たいした怪我じゃない
 それで、ほかに生存者はいるのか キマイラはどこだ」

一瞬で少年の顔は青ざめ ナナの腕をつかんだまま涙を流した

「ダメだ…あの化け物に近づいちゃダメだ
 あいつは長い髪の毛で一瞬で父さんと村長の首を刎ねた…人間の勝てる相手じゃない
 みんな…みんなが青い触手に殺されたんだ…あんたらも死んじまうよ」

青い瞳はまばたき一つせず 無表情のまま彼女は少年の頬に平手打ちをかました

「何人死んだか どれほどの脅威かなんてどうでもいい
 何人生きている 奴はどこだ 知らないならそう言ってくれ」

相変わらずこの人は容赦がないな 傷心してる子どもに平手打ちとは
まあ少なくとも手加減はしているか

「化け物は ついさっき 十分くらい前に…ズイの遺跡の中に戻っていった
 二十人くらいが生きたまま捕まって…連れていかれた
 オレの母さんも まだ生きてる…かもしれない…」

三人が振りむいた先には 月の明かりに照らされた巨大な建造物があった

「遺跡の内部とは厄介なところに巣を作ったものだ だが連れ去られた者たちがいるなら
 行くしかないだろう 村の怪我人たちはあいつらに任せればいい」

エンジンの音が次々と近づいてくる
アルバートの指さした方向からは 救助車が向かってきていた

「本当に…あの遺跡の中に入るのか…化け物がいるのに…?」

レナードは少年のその一言を聞いて 彼の前にしゃがみこんだ

「それがグランドレイクの役目だ もうキマイラのせいで誰かが悲しむのなんて
 見たくなかったんだが…すまない遅くなってしまって」

時は一刻を争う 相手がどれほどの化け物だろうと戦って倒す以外の道はない
湿った夜風に吹かれながら 青年はモンスターボールを握りしめた



遺跡の中では モンジャラの少女が赤く汚れた触手を拭っていた
「…ジンを見た人間はちゃんと全部死んでくれてるといいのだけれど
 あとはわたくしが彼らと戦うだけ…さて次に殺されにくるのは誰かしら」

流れる地下水で血と泥のついたブーツと黒い肌を洗い
化け物は音もなく 階段を上がっていった
Re: シンオウの大地 番外編 (予定) ( No.168 )
日時: 2016/03/04 15:43:25
名前: 緑茶◆kEj/68/y4Ak ID:x6PmRF3M

かくほ1
Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 全て表示 |

| ポケモン王国 | ポケモンサン・ムーン攻略 | ポケモンORAS攻略 | ポケモンXY攻略 | ポケモンBW2攻略 | ポケモンBW攻略 | ポケモンHG・SS攻略 | ポケモン図鑑 | ポケモン育成論 | 掲示板TOP | ▲TOP |