みゅみゅっ!
日時: 2015/08/24 17:27:52
名前: あーるえー◆8UidDpBdyRw ID:NvYnKZbA

 過酷な旅の道中、ルージュラの群れに襲われ絶体絶命の窮地に陥るラルトス。死を覚悟する最中、幻のポケモンであるミュウがラルトスの下に現れた。
命を助けられ、ミュウに恋心を抱いたラルトスは、何も言わずに消えていったミュウを追いかけることに生涯を捧げる。
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Re: みゅみゅっ! ( No.1 )
日時: 2015/08/24 17:30:33
名前: あーるえー◆8UidDpBdyRw ID:NvYnKZbA

 私が親元から旅立ったあの日から、幾年が過ぎたのだろうか。
 思えば、途方もない苦境を乗り越えてきたものだ。あの頃は、本当に悲惨な毎日だった。

 今では高級ギャロップ肉や新鮮なキレイハナ野菜を食らってはいるが、
私がまだ華奢で繊細で可愛らしいラルトス(今でも当然私は世界一美しいが)だった時期は、食物連鎖の底辺であるコイキングぐらいしか食べるものがなかった。

 コイキングに次ぐコイキングの毎日は、今思い出しても腸が煮えくり返る。
 この私がそのような低俗な環境に居たのだと思うと寒気がする。
 コイキングをねんりきで釣り上げ、陸に降ろした途端、ギャラドスに進化された時は本気で死を覚悟した。
 テレポートですぐに逃げられはしたが、あのギャラドス、まだあの辺りにいるのだろうか。
 一時期はその川のヌシになって暴れまわっていたようだが、サーナイトである今の私なら、一騎打ちでも負ける気はしない。
 サイコキネシスでお刺身にしてやろうかしら。
 ……実際は、そのギャラドスの在り処も曖昧で、テレポートが成功するのかさえも分からないが。
 今の私にできることといえば、頭の中でひたすらギャラドスに呪詛を唱えることぐらいか。

 ――途方もなく、長い旅だった。私はもう、大陸を三度跨いでいる。
 私のラルトス時代は今までの旅の二割にも満たない。それほど遠い昔のことなのだ。 
 そう、行きずりの野生のポケモンをサイコキネシスでばったばったと投げ飛ばし、ちぎっては投げ、ちぎって投げ……ついにこの地方の女王となって君臨した今のわたしには、遠い昔のことだ。
 カイリキーの群れに囲まれて、一斉に求愛を示されたこともあったのだけれど、それらも全て過去の話だ。

 だが、私らしくもない。
 こうして王座に腰掛け、昔の記憶を探ろうとするなど。
 地位も名誉も全て手に入れ、華やかしい生活をしているというのに……まだ物足りなさを感じるというのか。
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Re: みゅみゅっ! ( No.2 )
日時: 2015/08/24 17:53:53
名前: あーるえー◆8UidDpBdyRw ID:NvYnKZbA

 ――それも全て、あの初恋のせいだ。
私がまだラルトスだった頃、ルージュラの群れに襲われ、失神しかけてテレポートを使うことさえままならない状況に陥っていた時、見たことのない一匹のポケモンが現れた。

 ピンクで、私と同じくらいに小さくて、可愛らしいポケモンだった。
 私に向かっておどけた調子でみゅみゅっと笑うと、強烈なサイコキネシスでルージュラの群れを一掃してしまった。
 そして、私には何も言わずに、目の前から何処かへと消えてしまう……。
 一目惚れだった。
 ルージュラのことなどはすっかり忘れ、あのポケモンの後を追い、テレポートで日が暮れるまでそこかしこを探し回ったが、結局見つかることはなかった。

 それからというものの、一攫千金を目論む私の旅に、初恋相手を探す目的ができた。
 あのサイコキネシスに匹敵する技を覚えるため、私はいつの間にかバトルジャンキーになっていた。
 ねんりきを鍛え上げ、キルリアに進化し、さらにねんりきを鍛え上げ、サーナイトになり、ついにサイコキネシスを覚えたときは、思わず感動に打ち震えて、
そのまま単騎で隣街の犯罪組織の本拠地に乗り込み、試し撃ちをしてはテレポートで逃げ帰るというのを何度も繰り返していたのが記憶に新しい。

 あれから血眼で毎日探し続けてはいたが、今の今まで出会うことはなかった。
 もう何年が経ったか分からない。
 いい加減忘れようとして、元々の私の野望である女王になったはいいが、まだ後悔がひしひしと残っている。忘れようとしても、忘れられない。
 女王でいる私も、そろそろ潮時なのかもしれない……。
 
 旅に出れば、いつかまた、出会える日が来るのだろうか。
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Re: みゅみゅっ! ( No.3 )
日時: 2015/09/09 00:54:53
名前: あーるえー◆8UidDpBdyRw ID:NvYnKZbA

 遠くから荒々しい音が聞こえてきた。
 顔を上げると、此方に向かって大慌てで走ってくる側近のエーフィーとチリーンが視界に入る。
 もの思いに浸っていたというのに、この私の邪魔をするとは。何事だ。

「えーふぃー!」
「ちりりりりーん!」

 彼女らが言うには、何者かが私のアジトに襲撃してきたらしい。
 近隣のカイリキーの群れなら、この前殲滅して乗っ取ってやった筈だが。

「ごきげんよう。ここが女王様のお部屋かしら」

 声がした方向を見れば、私の部下達が倒され、彼女の周りで地に伏していた。
 その間を通るようにして現れたのは、如何にも上品そうな少女だった。
 そして、その隣には、彼女を守るようにして体表に電気を散らすデンリュウがいた。

 小娘のポケモン、やけに毛並みがいい。
 ほう、見るだけでもふもふしているのが分かる。
 うちのエーフィーといい勝負だな。
 トレーナーは何処ぞの金持ちお嬢様か……。
 私がエーフィとチリーンに目配せをすると、瞬く間に二人は侵入者に立ち向かっていった。

「でんりゅう!」

 その途端に、雷が落ちた。
 凄まじい勢いで二人は吹き飛ばされ、目を回して瀕死状態になってしまう。
 ……使えない。やはり、頼れるのはこの身一つという訳か。
 あ、エーフィーの毛並みが弾けている。

 小娘が倒れ伏した二人を尻目に、ゆったりと此方に近づいてきた。
 私のサイコキネシスの間合いに入るか入らないかのところで立ち止まり、口を開く。穏やかに微笑んで、此方を見据えながら。

「ここらには一際強いサーナイトが居ると聞いてやってきたのですけれど、あなたがそうみたいですね」

 私も小娘に対抗して、にっこりと笑みを浮かべた。
 デンリュウは何かを感じ取ったのか、此方をじっと見て警戒している。

「……私と勝負しましょう。もし勝ったら、そうですわね、ここを明け渡してくださいませんか?」

 ほう、このわたしに喧嘩を売ろうと言うのか。
 良い度胸だ。倒せるものなら、倒してみるがいい。
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Re: みゅみゅっ! ( No.4 )
日時: 2015/09/09 01:13:22
名前: あーるえー◆8UidDpBdyRw ID:NvYnKZbA

「サナァ…」

 小さくため息を吐き、重い腰を上げて王座から立ち上がる。それに伴い、小娘がデンリュウをちらりと見た。

「連戦は酷ですわね」

 そう言ったかと思うと、デンリュウをモンスターボールに戻し、すぐさま新しいボールを取り出す。

「もっこり草太郎、行きなさい」

 もっこり草太郎だあ? 
 聞きなれない単語に思わず耳を疑い、小娘が投げ出したボールを怪訝に見つめていると、私の背丈を優に越えるモンスターが現れた。
 どしーんと小さく地面が揺れる。ドダイトスだ。
 もっこり草太郎……もしかして、この小娘、こいつのニックネームのことを言っているのか? 
 信じられない。とんだカルチャーショックだ。

「草太郎、じしん」

 小娘が指示する。
 遅い。
 私はサイコキネシスを発動し、あの巨体を力ずくで宙に浮かせる。
 そして、思い切り地面に叩き落し、一発でノックアウトさせた。
 ……ふん、レベルが違うのだよ、レベルが。
 
「あらあら、まあまあ。仕方ないですわね」

 ドダイトスが一瞬でやられたのにもかかわらず、小娘は余裕そうな佇まいをしていた。
 驚きだ。
 もっこり草太郎はかませだったのか。
 懐にはさぞかし古強者のポケモンがいるのだろうな。
  
 いいだろう。
 出し惜しみなどしない。
 全員まとめてかかってくるがいい。
 全力のサイコキネシスで捻じ伏せてやる。
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Re: みゅみゅっ! ( No.5 )
日時: 2015/09/27 00:00:11
名前: あーるえー◆8UidDpBdyRw ID:NvYnKZbA

「シャドー小松、行きなさい」

 小娘はドダイトスを引き戻し、新たなポケモンを出す。すると、意味ありげに笑みを浮かべた。
 うげ、ゲンガーだ。シャドー小松などという意味の分からないお笑い芸人のような名前で判断していいポケモンではない。れっきとしたわたしの苦手なポケモンの一匹である。
 こういう相手は、今までは多人数でぼこったり、背後から不意打ちを狙って倒してきたが、こうした一対一のバトルではそうもいかない。

 だが、手がない訳でもない。
 先手必勝で行く。
 影うちだ。
 
 出遅れたゲンガーに向かって、凄まじい速さで私の足元から影が伸びてゆく。
 瞬く間にヒットし、ゲンガーが仰け反る。
 それを見計らい、テレポートでゲンガーの後ろに回りこむ。

 我ながら、鮮やかなお手並み。
 この美しさには惚れ惚れする。
 その、ほんの少しだけのうっとりに気を取られていたからなのか、いつのまにか、目の前からゲンガーが居なくなっていた。
 おい、何処に行ったよ。

「小松、シャドボですわ」

 後ろを振り向くと、シャドーボールを打ち出そうとするゲンガーの姿が見えた。
 速い。さっきの草太郎とは違い、段違いに速い。
 テレポート無しでその速さか。

「サナッ」

 吹き飛ばされた。
 地面にぶつかり、体に強い衝撃が響く。ボロボロだ。
 土煙が私の華奢でか弱い体を汚している……。
 この私を地につかせるとは、良い度胸じゃないか。くそったれめ。

「ではお約束通り、わたしの仲間になってもらいますわよ」
 
 勝手に終わらせるな。体はまだまだ動く。
 私が立ち上がると、察したゲンガーが攻撃態勢に移り、シャドーボールを放ちながら肉薄してくる。
 飛んできたシャドーボールをすんでのところでひらりとかわし、射程内に入ったゲンガーをサイコキネシスで吹き飛ばす。
 立ち込めた土煙が晴れれば、そこには無様に這い蹲るゲンガーの姿が。
 自分から近づいてくるとは、シャドー小松、愚かな奴だ……。

 「あら」

 状況を把握した小娘が、はじめて驚いた顔をした。
 これぐらいできて当然だ。
 この程度で瀕死状態になったのだと思われては困る。
 わたしは、女王なのだから。
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Re: みゅみゅっ! ( No.6 )
日時: 2015/09/27 09:32:34
名前: あーるえー◆8UidDpBdyRw ID:NvYnKZbA

 ――空気が変わった。
 いつのまにか、小娘が、先程までの余裕のある雰囲気ではなく、真剣な表情をしていた。
 異様な紫のモンスターボールを大事そうに取り出し、慎重に投げ出している。
 ゲンガーと入れ代わりに現れたのは、見たことのないポケモンだった。
 ゴキブリのような体形に、マグマのような体表。なんだ、こいつは。

「……終わらせてあげますわ、赤ゴキ」

 なんでこんなポケモン、この小娘は持っているんだ?
 先程のポケモンとは、毛色が違う。というか、レベルが違う。おそらく、私よりも数段上だ。
 私の勘が、いや、エスパーとしての勘が、そう告げている。
 一旦、テレポートで距離をとり、崖の上に降り立つ。
 不味い。
 逃げようか? 
 いや、女王に撤退の二文字はない。進む以外の道はない。
 どうやってあの化け物を倒すか。
 それだけだ。

 サーナイトに進化してからは、ピンチに陥ることはほとんどなかった。
 バンギラスとガブリアスのコンビに、サザンドラとカイリューを筆頭にしたドラゴン集団と戦争して、基地を制圧されかけて以来か。
 懐かしい。
 あの頃のエスパー軍団は、なかなかの勢力だった。

 結局、なんとか追い返したはいいが、歴戦の仲間が死んだ。
 長期の戦いで辺りの森が半壊し、バンギラスの砂嵐のせいで基地は土に埋まって使い物にならなくなり、元に戻すのが大変だった。

 テレポートを扱えるポケモンもいたが、逃げずに戦っていた。
 後から入り、実力を示して一気に組織の上層部にのし上がった私はそれほど詳しくはないが、ここにある祠を守る為に、皆必死だったらしい。

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Re: みゅみゅっ! ( No.7 )
日時: 2015/09/27 09:34:40
名前: あーるえー◆8UidDpBdyRw ID:NvYnKZbA

 この時代の私はまだ、副隊長だった。
 参謀であり隊長でもある長老フ−ディンが短時間で策を練り上げ、軍を指揮し、彼自身もまた獅子奮迅していた。

 催眠術使いの変態スリーパーは相手を何匹か眠らせた。
 エーフィーとチリーンは負傷したポケモンの看護に回った。
 幹部の戦闘狂チャーレムが、私達の強敵であるバンギラスとサザンドラをあっさり倒し、軍の士気を高めたものの、
死体の山の中での乱戦でガブリアスに鉢合い、最期に飛び膝蹴りを外して地面にぶつかって死んでいった。

 なし崩し的に追いつめられたエスパー軍団は、めったに動こうとしないヤドラン軍を無理やり駆り出し、
制圧して引き入れたルージュラ軍も駆使し、私が残りを抑えて、なんとか撤退まで持ち込んだ。
 
 その戦争の後、長老フーディンが力尽きて倒れ、私が女王となったのだ。

 おかげで戦力が大幅にダウンして、今ではこんな小娘にも簡単に入り込まれるように。 
 ヤドランは相変わらずマイペースだし、スリーパーは変態だし、勝手に街に出かけて人間の子供をさらってくるし、ルージュラは嫌いだし。
 実質、今戦えるのは私だけだ。

 そういえば、長老フーディンが死ぬ前に、私にここの祠を託したんだっけ。
ん、祠? 
……あ、その為にこの小娘はここまで来たのか。伝説のポケモン、セレビィの祠に。
メンテ
Re: みゅみゅっ! ( No.8 )
日時: 2015/10/16 18:40:14
名前: あーるえー◆8UidDpBdyRw ID:NvYnKZbA

「かみくだきなさい」

 考えるのは一旦止めた。
 ゴキブリが崖を這って此方に向かってきたからだ。
 カサカサと音を立てて気持ちが悪い上に、その速さはゲンガーに及ぶほどだった。

 だが、それは問題にはならない。
 かげぶんしん。
 私がサイコキネシスだけで成り上がった訳ではないことを、教えてやろう。

 ゴキブリのかみくだくが空を噛んだ。
 そこにサイコキネシスをぶち当てる。
 少しだけぐらついてはいるが、手ごたえがない。堅い。
 すぐさま体勢を建て直し、私に向かって凄まじい速さで走り出してくる。

「ふんえん」

 テレポート。
 四散したほのおが降り注ぐが、難なくかわす。

「ストーンエッジ」

 かげぶんしんにかげぶんしんを重ねる。
 そうしている間にも絶えずに向かってくるゴキブリの猛襲をひらりと避ける。
 横からサイコキネシスを放つ。

 ほんの少しの合間を縫って瞑想をする。
 そして、サイコキネシスに次ぐサイコキネシスの応酬。
 幾度となく手馴れたサイコキネシスを当てる。
 
 幾ら化け物だとしても、このままいけば押し切れるか?
 翻弄しながらゴキブリの姿を見据えるが、それほどのダメージがあるようには思えない。
 ここまでやって、ようやく半分ぐらいか。

 その、微妙な体力が頃合いだったのか、
 突然ゴキブリが息を吸い込み、何かを溜めた。
 嫌な予感がする。

 そして、その予感は次の瞬間に的中した。
 時が止まったような感覚がする。
 疾風の如く眼前に出現した竜巻が火柱と交じり合い、爆発的に規模を広げてゆく。
 見たことのない技。
 ほのおのうずに似てはいるが、あれはこんなに高火力ではない。

 すんでのところを見極めて、テレポートで後ろに下がる。
 すると、背中に焼けるような痛みが走った。

「サナァァ……」

 ねっぷうだ。
 こいつ、トレーナーの命令なしに自分で動きやがった。
 小娘、この化け物をうまく扱いきれてないな。
 
 ちりちりとした痛みが未だに残っている。
 だが、耐えられないほどではない。
 キルリア時代に瀕死状態で三日三晩危険地帯を彷徨っていた時に比べればマシだ。
 直撃していたら不味かった。
 おしいことをしたな、ゴキブリ。
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